はたらく細胞 (2024):映画短評
はたらく細胞 (2024)ライター4人の平均評価: 4
難病ドラマがハイパーエンタテインメントに!
難病ドラマが苦手な筆者でも、これは素直に楽しめた。もっと言ってしまえば、泣けた。それもこれも、原作に則った体内・体外の二重構造ドラマの効果ゆえだろう。
体内をディズニーランドやターミナルのように見せるビジュアルの面白さ。白血病細胞のゾンビ風な描写も、ワイヤーワークを多用したアクションも目を引くに十分だ。そんな漫画チックな世界観が体外のベタなドラマにも溶け込み、観る側の気持ちをしっかり持っていってくれる。
共感を自然に引き寄せ、楽しませるという点ではハイクオリティのエンタテインメント。『翔んで埼玉』の武内監督らしいケレン演出はもちろん、俳優陣の1.5~2倍増しオーバーアクトの妙も光る。
各細胞の見せ場を積み重ね、作り上げる壮大なドラマ
前作『もしも徳川家康が総理大臣になったら』では、独自の色を出し切れなかった感のある武内英樹監督。今回はアニメも人気の原作だけに、爆死も懸念されたが、そこは『翔んで埼玉』『テルマエ・ロマエ』を成功に導いたセンスの持ち主。スピンオフ「はたらく細胞BLACK」を含む、それぞれの細胞の見せ場を積み重ねることで、終盤に向けて、壮大なドラマを作り上げていく。映画オリジナルとなる体外で展開される「マルモのおきて」延長戦もベタながら楽しめるほか、「ルパンの娘」ファン感謝祭な肝臓パートや程よい下ネタが繰り出される肛門パートなど、お得意のフィールドに持っていくあたりは、さすがの一言である。
"実写映像ならでは"の迫力が爆発
コミックもアニメ版も楽しく見ていて、実写版で見たいのは何かというと、それは実写ならではのヴィジュアル・インパクト。そんなこちらの勝手な期待に、武内英樹監督が『翔んで埼玉』シリーズのノリのまま、しっかり応えてくれる。『るろうに剣心』シリーズのスタントコーディネーター大内貴仁による切れ味抜群のアクションはもちろん、それだけでなく、"物体としての人間の身体"が大量に動く時の生の迫力に特化した映像が続々。武内監督の発案だという、トウモロコシ、ドーパミン大量分泌時のDJの投入も見事。
多様な細胞役は人気俳優が大挙出演で、この俳優がこのキャラをやるとこうなるのか、というコスプレ的な楽しさもたっぷり。
後半は思わぬアクション巨編に
笑って泣けるという謳い文句通りのオールスターアクションコメディ。前半は『翔んで埼玉』、『テルマエ・ロマエ』の武内監督らしい”擬人化ギャグ”映画でしたが、中盤以降はあっと驚くアクション巨編になっていてびっくりしました。『るろうに剣心』シリーズを彷彿とさせる高速ワイヤーアクションのつるべ打ちです。アクション監督を見たら『SP』や『HiGH&LOW』の大内貴仁ということで納得です。佐藤健、山本耕史、仲里依紗の登場シーンは瞬き厳禁です。そしてセカオワFukaseの怪演も良かったです。もっと演じているところも見てみたいですね。阿部サダヲ&芦田愛菜の人間パートもベタですが泣かせます。