フェラーリ (2023):映画短評
フェラーリ (2023)速さのためなら死をも辞さないという美学
フェラーリの創始者エンツォ・フェラーリを題材に、より速い速度のためなら死をも度外視する、という心的状態かつ美学を持ち、それを実践する人間を描く。彼はそれを周囲の人々にも強要するので、悲劇も起き、軋轢も生じるが、その姿勢を変えない。この美学が、彼が創造する車の形にも、オペラを愛する嗜好にも通底する。それは監督マイケル・マンの美学でもあるのではないか。
そういう人物が自作の車を走らせるので、この映画のレースシーンは、誰が1位になるのかではなく、誰が死を度外視して速さを選ぶのかを描く。その切迫感、臨場感を、カメラが車の助手席からも撮影。緊迫した映像から、一瞬も眼を離すことができない。
この短評にはネタバレを含んでいます