フォールガイ (2024):映画短評
フォールガイ (2024)ライター6人の平均評価: 3.3
『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』に似た感触
『アトミック・ブロンド』のハイセンスは何処やら。前作『ブレット・トレイン』に続き、今回もデヴィッド・リーチ監督の悪ノリ演出にハマれるかどうかで評価が分かれる。ド派手なアクションシークエンスを畳みかけ、ライアン・ゴズリングの魅力で引っ張っていく。リー・メジャース&ヘザー・トーマスの姿も拝めるし、「お笑いウルトラクイズ」のようなクライマックスなど、同じ往年のTVシリーズの映画化『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』にも似た感触だ。とはいえ、意外と肝である恋愛や謎解きなどの脚本は弱く、楽屋ねたや音楽ねた、メタねたの数々は『デッドプール&ウルヴァリン』後だと、インパクトに欠ける。
映画作りの現場への愛に満ちた痛快アクション
調子だけは良いが人使いの荒い映画プロデューサーに拝み倒され、撮影現場を放ったらかした我がままスターの行方を探す一流スタントマンが、とんでもない罠にはまって犯罪者の濡れ衣を着せられてしまう。もしやして…とは思ったが、ラストにオリジナル・キャストが登場して「やっぱり!」となった往年の人気ドラマ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』の劇場版リメイク。なんというか、全体的にちょっと悪ノリが過ぎるような気はしないでもないが、しかし個人的にこの過剰な荒唐無稽は嫌いじゃないし、映画作りに情熱を捧げる全てのスタッフへエールを送るストーリーも胸アツだ。これだけカッコいいライアン・ゴズリングも久しぶりかも!?
もっと良い作品になれたはず
今最高に乗っているライアン・ゴズリングとエミリー・ブラント(#Barbenheimerのふたり!)の共演で、普段スターの影に隠れているスタントマンに焦点を当てる物語。だが、その潜在性を十分活かしきれなかった。アクションコメディなのだから楽しませてくれればリアリティがなくても問題ないのだが、ストーリーは薄く、アクションはたくさんあっても斬新さはない。スタントマン出身のデビッド・リーチの個人的な思い入れは感じられるし、撮影現場のシーンはさすが普段そこにいる人たちにならではのディテールが入っているが、映画自体が面白くないため、自己満足、内輪受けになってしまっている。もっと良い作品になれたはずと残念。
映画愛とスタントマンへのリスペクトだけでも美味しい一本
ライアン・ゴズリングは『ドライヴ』でもスタントドライバー役を演じたように、あのどこか憂いをたたえた目が、スター俳優にもかかわらず、誰かの“裏方”に徹するキャラにハマることを今回も証明。超絶アクションを鮮やかにこなしながら、冷静さと切なさが伴うというスタントマンの本質を体現しているようで、ゴズリング最高!
主演俳優やプロデューサーのモデルを妄想するのは映画ファンの楽しみだが、出てくるネタがマニアック過ぎないのは好印象。
劇中のセリフでも「アカデミー賞にスタント部門を!」と語られるが、エンドロールを観ればそのアピールを心から応援したくなる。それくらい愛とリスペクトに溢れた一作なので、後味も爽やか。
笑えて痛快! スタントマン視点の映画愛映画
映画への愛を描く映画愛映画、かつ、それを裏方であるスタントマンを主人公に描くところが魅力。しかもデヴィッド・リーチ監督自身が、スタントマン出身だ。映画は謎解きミステリでもあり、ロマンスもあるが、それにも増して、派手なスタントシーンの気持ちよさが満載。空中回転しながら壊れる車を運転する。大爆発で吹き飛ばされる。飛行機から飛び降りる。それをスタントマンがクリアするのが、問答無用に気持ちいい。この快感は本能的なものなのではないか。
本編中で何度も鳴り響くKISSの1979年の大ヒット曲「ラヴィン・ユー・ベイビー」が、この映画のノリそのもの。少々古風で派手で王道で、笑えて痛快で気持ちいい。
スタントマンへのラブレター
実際にスタントマンとして多くの作品に関わってきたデヴィッド・リーチ監督による世界中のスタントマンへのラブレターともいえる作品。映画撮影の内幕もの的な楽しみ方もできます。ハリウッドメジャーによるアクション大作でありますが、とてもチャーミングで、要素がいっぱいな映画に仕上がっています。ライアン・ゴズリングとエミリー・ブラントの二人は流石の巧さ、硬軟自在な演技を見せてくれて映画に厚みを持たせてくれます。エンドロールはジャッキー映画を思わせるオフショットが満載、最後まで楽しい一本です。