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ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー (2019):映画短評

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー (2019)

2020年8月21日公開 102分

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー
(C) 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.6

猿渡 由紀

主人公は、たとえひとりだけでもアジア系にするべきだった

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

とくに新しくはない話だが、女性の作り手が女性目線で語ることで、それなりに違いが出た。ただ、たった一夜でみんなが何かを発見するというストーリーは、やはりちょっと都合が良すぎる。まあフェアリーテールと思えばそこは許せるが、もうちょっと現実的にするために、ふたりともとはいかないまでも、主演女優のうちひとりをアジア系にしてほしかった。現代のL.A.で、良い大学に入ることに集中するがため全然遊んでこなかった女子高生という役は、若いアジア系女優にとってすばらしいチャンスになったはず。ひとりをレズビアンにするところまでは頭が回っただけに、なおさら残念に思う。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

おバカ青春コメディに収まらないエバーグリーンな魅力

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 高校時代を勉強に捧げて見事志望校に合格した、意識高い系のイケてない女子コンビ。ところが、遊びほうけてばかりいると思っていたリア充同級生たちも、一流大学に進学すると知って茫然!あたしたちだってイケてるとこ見せてやる!とばかりに、人気者グループの卒業パーティに乱入しようとするも、肝心の会場が分からず夜の町を右往左往する。下ネタギャグを含めて『スーパーバッド/童貞ウォーズ』の女性版的な印象もあるが、しかしスクールカーストのステレオタイプに別角度から斬り込むなどの着眼点が非常に面白く、単なるおバカ青春コメディに収まらないエバーグリーンな魅力がある。遊び心満点の演出も秀逸!

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相馬 学

スクールカーストの概念を更新する傑作

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 『ブレックファスト・クラブ』に始まったとされるスクールカースト映画の歴史が更新されたような驚き。この青春コメディには、確かにそれがあった。

 ヒロインふたりはいわゆるガリ勉だが、かたや生徒会長で我の強いおデブちゃん、かたや繊細な同性愛者とキャラ的に奥がある。同級生たちも同様で、チャラくてもビッチでも勉強がデキたりする。カーストのステレオタイプに押し込めない人物描写がイイ。

 一夜の騒動劇という点で『スーパーバッド』を引き合いに出されることもあるが、大人への成長劇としての成熟度はこちらが断然、上。正直、O・ワイルドがここまで描けるとは思っていなかった。脱帽!

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山縣みどり

ティーンの気持ちを代弁するセンスのいい青春ドラマ

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

高校卒業前夜のJK冒険譚で『スーパーバッド/童貞ウォーズ』にも通じるが、さらなるウィットとミレニアルなキャラ設定が加わったセンス抜群の青春ドラマだ。主人公のモリー&エイミーは意識高い系JKで、ガリ勉&レズビアンな自分を誇りに思っているのが実に今どき。が、他者評価を気にしてないようで実はという微妙なJK心理に共感。猪突猛進がモットーのモリーを演じる太め女優B・フェルドスタインが勇敢なコミック演技を披露し、目が釘づけだ。主人公が女性器名称を連呼するのには苦笑したが、台詞はとても知的。パリピーな同級生も個性が際立っていて(ニコ・ヒラガは要注目!)、“書を捨てて、街へ出よう”って真理だなと納得。

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くれい響

2020年洋画ベストテンで、絶対に外せない1本!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

主人公モリー&エイミーの登場から、『ロミーとミッシェルの場合』にも近いバカコンビ感が漂い、気づけばブッ飛んだキャラが大渋滞! ジェンダーもスクールカーストも超越したお祭りノリは、近年の“とりあえず『ブレックファスト・クラブ』オマージュ”なハイスクール映画とは一線を画し、ハイになるとバービー人形と化す描写など、センスの良さも抜群。オリヴィア・ワイルドの監督デビュー作ながら“さすがはジェイソン・サデイキスの嫁!”感がハンパない。ストーリーの運び方や伏線回収など、ほぼ同じ“パーティへの道”を描いた『グッド・ボーイズ』で感じた弱点を何気なく解消してるなど、その仕上がりはベストテン級だ。

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斉藤 博昭

感覚は新しく、共感レベルは普遍的。青春ムービーの魅力特級

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

ダラーンとした会話や、日本語字幕では表現しきれないセリフ、さらに唐突なシーンの切り替わり、過剰な演出もあったりと、冒頭こそ入り込みづらいのだが、ちょいガマンして付き合うと「美味」となる典型的作品。
必死こいて勉強してきたのに、大して努力してないクラスメイトが一流大学に決まるなど、皮肉な現実にいちいち共鳴させつつ、セクシュアリティや人種を強調せず、当然として存在する「理想郷」のような世界がここにある。
メインとなるパーティの夜は移動距離や時間を無視して永遠に終わらない感覚が、あの名作『フェリスはある朝突然に』に似ていて、ここでも青春映画の基本をクリア。O・ワイルドは俳優より作り手で大成する予感!

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平沢 薫

あまりイケてない女子コンビの暴走っぷりが痛快!

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 あんまりイケてないフツーの高校生たちがハメを外して大騒ぎ、というのは青春映画の王道で多数の映画があるが、その主人公はたいてい男子。でもそれ、女子だってアリでしょ、ということを証明したのがこの映画。仲良し女子コンビが、暴走もすればバカもする。そして熱い友情もある。もちろん、恋あり、悩みあり、何でも知ってる親友の別の顔の発見もあるが、泣かせには走らない。
 加えて、この年頃ならではの"ドキドキ感"が眩しい。初めてのハウスパーティ、しかも、そこには片思いのあの子も来ている。その期待と不安と切望。そんな青春ドラマの切なさと爆笑、リアルさとホラ話っぽさ、その配分のさじ加減も絶妙。

この短評にはネタバレを含んでいます
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