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ロケットマン (2019):映画短評

ロケットマン (2019)

2019年8月23日公開 121分

ロケットマン
(C) 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

ライター10人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.1

ミルクマン斉藤

キッチュと真面目が拮抗するエルトンの世界だが…

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

意外と真摯なエルトン・ジョン半生記。タロン・エガートンは決して本人に似てはいないけれど、素晴らしい歌声(なんと本人)と真面目な演技で、「馬鹿げたパフォーマンスに繊細な歌詞」というアンヴィヴァレントなエルトンの世界の魅力を伝える。ただキャラクターに比べ、演出があまりにも普通人の感覚なんだよなあ。幼少期のトラウマを抱えたスーパースター、という点で、エルトンも出演した『Tommy/トミー』にも似ていることだし、ミュージカル・シーンはあのキッチュさを意識しているのだけど、とことんダサい。ああ、あのケン・ラッセルのようなぶっ飛んだ想像力とケレン味ある監督が手掛けたならパワーは数倍になったはずである。

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なかざわひでゆき

イマジネーションと躍動感に溢れる演出が素晴らしい

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 エルトン・ジョン好きというより洋楽ポップス好きとして、まずは音楽史上屈指の黄金コンビであるバーニー・トーピンとの友情ドラマに鳥肌ですよ!純粋に音楽を愛する若者同士が出会い、お互いの才能に驚き認め合い、その喜びを表現するかの如く次々と名曲を紡ぎだしていく。このワクワクするような高揚感ときたら!もちろん、幼い頃から手の届かない愛情をひたすら求め、悩んで苦しんで迷い続けながらも、その熱い想いを音楽にぶつけていったエルトンの人間臭い半生にも胸が熱くなる。タロン・エガートン(正しい発音はエジャートン)の歌も見事だが、なによりイマジネーションと躍動感に溢れるデクスター・フレッチャーの演出が素晴らしい。

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山縣みどり

愛を求め続けたエルトン・ジョンに心揺さぶられます

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

故ダイアナ妃やハリー王子夫妻とも親しく、華やかに生きるエルトン・ジョンの半生を彼のヒット曲に乗せて描いた快作だ。親友バーニーとの出会いや類まれな才能でスターダムを駆け上る成功談だけでなく、毒親との関係性や邪悪なマネジャー兼恋人との歪んだ愛情といった負の部分もD・フレッチャー監督はしっかり描く。そのため、愛を求めて葛藤するエルトンへの見る側の思いが膨らみ、彼の人となりをしっかりと理解できる構成だ。口パクにせず熱唱したT・エガートンをはじめとする役者陣は好演。また、時代感を再現した美術や衣装も素晴らしい。余談だが、少年時代を演じた子役がエルトンの子供時代に激似でびっくり。キャスティング係、すごい!

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中山 治美

『ライオン・キング』と合わせてどうぞ!

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

売れてドラッグにハマり痛い目に遭う。
ミュージシャン映画の王道だ。
当人たちがそういう人生を歩んできたのだから致し方ない。
しかしエルトン・ジョンは現役だ。製作総指揮も務めている。
だが失態も家族との軋轢も、”ありのまま”を惜し気なく晒す。
レジェンドになることを拒否しているかのよう。ROCKだな。
そもそも自分をイジった『キングスマン』チームと組んでいる辺りもセンスあり。
天邪鬼な彼らだけに、ライブシーンてんこ盛りで観客にカタルシスを与えるようなことはしない。
音楽の才能は『ライオン・キング』で補足するとして、エルトンの波乱人生とタロン・エジャトンの多才さを堪能したい。

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くれい響

ミュージカル映画ならではの魔法に酔う!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『ボヘミアン・ラプソディ』の陰の立役者、デクスター・フレッチャー監督がフルパワーで挑んだエルトン・ジョンの楽曲で構成した伝記ミュージカル映画。「土曜の夜は僕の生きがい」とともに、思春期のエルトンと時代の流れを描いたシークエンスなど、ミュージカル映画ならではの魔法を楽しめる一方、ド派手なステージ衣装で道化のように振舞うロックスターの心に潜む孤独が胸を突き刺す。監督とは同じ伝記モノ『イーグル・ジャンプ』でも組んでいるタロン・エガートンだが、今回もイケメンとは言い難い主人公を熱演。『SING』でも披露した美声を聴かせまくり、やっと『キングスマン』の呪縛から解放された感アリ!

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相馬 学

伝記というより、練りこまれたミュージカル

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 伝記ドラマではなく伝記ミュージカルであることを、まず踏まえておきたい。そういう意味では『ボヘミアン・ラプソディ』とは一線を画する。

 エルトンの音楽的な成功の陰には愛のない父母の存在が。鬼親のヴィラン的な紋切り調の描写は気になったがミュージカル、すなわち歌って踊るファンタジーであることを思えば、これもアリか。ただ、作詞家バーニーとの友情に焦点を絞るだけでも面白いドラマになったであろうことを思うと、少々歯がゆさも。

 とはいえ抒情的な音楽が映画を牽引している点は、やはり魅力的だ。エルトンの楽曲は適材適所で、成功と失墜を何より雄弁に物語る。『ドリームガールズ』にも似た正しいミュージカル。

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平沢 薫

音楽のあの不思議な力が、目に見える形になる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 音楽好きならきっとこの映画が好きになる。ライブ会場で発せられる音に浸っているときに、ふと全身を包むあの不思議な浮遊感が、そのまま映像になったシーンがある。そんなふうに、音楽の力を目で見える形にした場面が何度もあるのだ。しかも、歌を歌うのは主人公だけではない。歌が、作者を超えて、みんなのものになっていく。それもまた音楽の力だということが伝わってくる。
 エルトン・ジョンの伝記映画であり、紆余曲折あったユニークな人物の興味深い物語でもあるが、同時に、個人の物語を超えて、愛されることを願ったひとりの子供の成長の物語にもなっている。それをタロン・エガートンが彼らしい動きと彼自身の声で演じている。

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斉藤 博昭

リアル濃厚な告白映画が、一周回って麗しきブロマンスに

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

血のつながる家族の歯に衣着せぬ非難や、クスリに溺れる蟻地獄の恐怖から目をそらさず、過剰なまでに描写し、ラブシーンもオブラートに包まない。その徹底ぶりが潔い。時折挟まれるミュージカルシーンやド派手衣装が、シビアな物語とまばゆいまでのコントラストを放ち、それこそが今作の狙い。極端なコントラストこそ、エルトンの人生を作ったのだ。

しかし最も、そして静かに心を震わせ続けるのが、作詞家バーニーとの生涯の友情で、「ユア・ソング」の誕生シーン、キャスト・選曲・人間関係など多くの局面での『リトル・ダンサー』とのシンクロもあって、同作のビリー少年と親友マイケルの関係を思い出しながら観ると、身悶えが止まらない。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

タロン・エガートンの極上級「エルトン歌ってみた」

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『ボヘミアン・ラプソディ』パート2という見られ方から多少角度をズラしつつ、満足度や強度はなるだけ下げてはいけない――という企画の難しさゆえか、色々と苦心の跡アリ。ただタロン・エガートンのなりきりパフォーマンスが本当に素晴らしく、エルトンと共演した『キングスマン:ゴールデン・サークル』の続きという流れで見ると感慨深い。彼自身による歌唱も申し分なく、基本それで充分じゃないかと思う。

偉人伝ミュージカルという観点から言うと、時系列の解体など楽曲の当て嵌め方は賛否出るかも。もっと具体的な名曲誕生秘話も欲しかったが、生涯のソウルメイトとなる作詞家バーニー・トーピンとの出会いのくだりはやはり最も胸アツ!

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猿渡 由紀

綺麗事ではないものが生む美しさとパワー

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

“普通”という枠に絶対おさまらないこの人に最もふさわしく仕上がった傑作。会話の途中で歌やダンスになるミュージカルの形をとりつつ、彼の伝説のライブやミュージックビデオを当時のまま再現するという、映画だからこそできることをやってみせるのが見事。それが非常に自然に、かつカラフルに展開していくのである。愛に飢え、酒、麻薬、セックス依存症だった彼が更生施設に入るところから始まるこの物語で、観客は、彼がそこでやったのと同様、まっすぐに彼の半生に向き合っていく。成功者である彼が綺麗事でまとめずこれらの過去を語ることが人々に与えるパワーは絶大だろう。その正直さと勇気に拍手。

この短評にはネタバレを含んでいます
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