300 <スリーハンドレッド> ~帝国の進撃~ (2014):映画短評
300 <スリーハンドレッド> ~帝国の進撃~ (2014)ライター8人の平均評価: 3.1
看板スターがいなけりゃ、エログロに走ればいいじゃない!
明らかに、前作の世界的ヒットを受けてムリヤリ製作した続編だが、300人の精鋭部隊も、ジェラルド・バトラーなどの看板スターも不在。で、そこで出した答えが「エログロに走ればいいじゃない!」という潔さ。しかも、「前作で実現できなかった3Dで!!」というB級すぎる発想の転換が、本作の持ち味である。
もちろん、エロ要素を一手に引き受けるエヴァ・グリーンの巨乳も3D。その名がアホっぽいジャンキーXLの音楽もどこか軽い。前作のカタルシスはほとんどないが、「観客を楽しませてやろう」というエンタメ精神は前作越え。一時期『ダイ・ハード』5作目の候補になったノーム・ムーロ監督の今後がちょっと楽しみである。
評判通り、やっばりエヴァ・グリーン!
レオニダス王もいなければスパルタの戦士思想もないし、前作のような濃厚風味は期待できないと思っていたら意表を突く面白さが。MVPを挙げるなら、悪女アルテミシアを演じたエヴァ・グリーンに尽きる。
ペルシャ軍を率いる策略家にして剣の達人。切り落した首にサロメのごとくキスをするアヤしさや、停戦交渉を性交渉の場に変える魔性。すべてがギリシャへの怨恨に基づいているという設定も、キャラに凄みをあたえる。
もちろん戦闘シーンは前作と同様の迫力。海戦主体ということもあり、沈没する船上のパニックに加え、船底の奴隷たちの絶望感をも写し出している点が壮絶さに拍車をかける。とにもかくにも、燃える!
『ショーガール』以来の゛笑撃゛
このシーンが強烈過ぎて、話の方はぶっ飛んでしまった。S・ステイプルトンVS.E・グリーンの合体。敵同士でいがみ合っていた2人が、突如交渉の席で盛り上がり、野獣のごときの肉弾戦を見せる。エロを超えて笑いを生む激しさは、珍作『ショーガール』のプールでの一戦を彷彿とさせるインパクト。IMAXで観賞する人はトラウマになるぬよう要注意だ。
シリーズ第2弾はこのシーンに象徴されるように、女をも惜しみなく使う女傑アルテミシアの暴れっぷりに尽きる。筋肉フェチやアクション好きの萌えポイントはほぼ皆無だが、1つでも映画史に残るシーンが誕生したのだからいいじゃないか。今から言っておこう。ラジー賞、おめでとう!
凄すぎるぜ、エヴァ姐さん。
敵にだあああ、っと早回し気味に斬りこむ→いきなり、コマ送りふうのスローモーション→斬られてどばっと飛び散り、スローで迫りくる3Dの血→また早回し気味に斬りこんで……ひたすらこれの繰り返し。催眠効果を狙ってるのか?と思うくらいに一本調子なアクション・シーンにただただ「阿呆か」と呟くしかない。どのカットも青く暗く着色され、たまに噴きあがるオレンジの炎以外メリハリってものもない。ただズバ抜けて強烈なのが、凶暴かつ残酷な女将軍エヴァ・グリーンの狂態!かき切った男の生首にサロメのようにくちづけし、敵の将を懐柔すべくほとんど逆レイプのように猛然とハダカで乗っかる彼女がこの映画のすべてだ。
陰の主役アルテミシアの魅力にクラクラ
スクリーンから男性ホルモンが分泌されるマッチョ映画の続編は、過激なバイオレンスと飛び散る血しぶき&切断された肉体、そして山盛りのシックスパックと期待通り。しかし、今回は悪役の女戦士アルテミシアが魅力的だ。哀れな過去ゆえに男への憎悪をたぎらせ、復讐の鬼と化した彼女がアテネ軍相手の壮絶な海戦に命をかける。残虐非道で勝つためには手段を厭わない悪魔のようなヒロインに誰もが共感できるとは思わないが、養父仕込みの戦闘術と生来の妖艶さで人生を切り開いた彼女にサバイバル術を学べそう。演じるエヴァ・グリーンの物悲しげな美貌がまたアルテミシアが味わった絶望感とマッチし、さらなる効果を上げている。
今回も、宙を舞う血の飛沫が美しい
やっぱり「300」シリーズはグラフィックな血の飛沫が快感。飛び散る速度は加工され、もっとも美しい形を描いた瞬間に一瞬静止する。この「300」式演出が今回も気持ちいい。しかも3D。奥行き系ではない飛び出す3Dで、血飛沫が宙を舞う。
そのうえ今回は海戦。うねり続ける暗い海と、血の深紅の対比が、眼の快楽。監督はCM出身のノーム・ムーロに交代したが、前作の監督ザック・スナイダーが脚本と製作に参加、作品の世界観を保持している。
嬉しい新要素は、エヴァ・グリーン演じるペルシア軍の残虐な剣士アルテミシア。「ダーク・シャドウ」「CAMELOT〜禁断の王城」同様、愉しそうに悪女を演じてくれる。
監督は替わってもやっぱりゴリゴリの特濃!
ザック・スナイダーが製作・脚本のみに回り、監督はCM界の売れっ子に交替……というのは悪い予感のする続編パターンだが、いやいや、充分合格の出来! 3Dとなった映像はきっちり7年ぶん技術向上しており、ハードコアな残酷絵巻として現時点では究極。改めて『ベルセルク』がこのレベルで映画化されたらなあと思ってしまった。
そして要注目は新参の女戦士役、エヴァ・グリーン。相手方の将軍との和平交渉が、なぜか格闘技みたいな濡れ場に展開する名・珍シーンは正直爆笑! 彼女、『雨の訪問者』のマルレーヌ・ジョベールの娘で、デビューがベルトルッチの『ドリーマーズ』という出自からすると、えらくマッチョな処に到達したもんだ。
大艦隊の激突する海戦シーンは必見
スパルタ軍VSペルシャ軍の“テルモピュライの戦い”を題材にした前作に対し、今回はほぼ同時期に起きたギリシャ艦隊VSペルシャ艦隊による“サラミスの海戦”を描く。
ヒーロー役サリバン・ステイプルトンに主演俳優のオーラがない、敵と味方の勢力が拮抗しているので前作に比べて緊張感に乏しい…など、全体的に弱点の目立つことは否めない。敵役のエヴァ・グリーンも、最強の戦士というわりに行動のツメが甘いし。
ただ、前作同様ハイレベルなCGをフル稼働した海戦シーンの壮大なスケール、裸の男と血飛沫が入り乱れる肉弾バイオレンスなどは期待通りの出来栄え。あと、ジャンキーXLによるトライバルな音楽スコアがカッコ良い。