トラッシュ!-この街が輝く日まで- (2014):映画短評
トラッシュ!-この街が輝く日まで- (2014)ライター3人の平均評価: 3
明日を生きようとする子供たちの冒険譚として観るべし。
いきなり『シティ・オブ・ゴッド』を想わせる子供のショット。リオ・デ・ジャネイロのスラム街ファヴェーラの子供たちを描くとなれば、この脚本家この監督をもってしても、今や歴史的名作として認知されるあの映画を意識せざるを得なかったのか。……だが正直、甘い。都市に蔓延する不正、汚職に対する怒りは十二分に伝わるし、この映画を明日への希望へと繋げようとする意志も感じるのだが、同時にこんなのしょせん綺麗ごと、ファンタジーに過ぎないとシニカルな目で見てしまうのも確か。ただ、この暴動の映画の製作をリオ・デ・ジャネイロ市が支援しているというのが現実の厳しさそのものを示唆しているようであるが。
子供たちへ託された未来を変える力
リオ・デ・ジャネイロの貧民街でゴミ漁りをする少年たちが、拾った財布の中に“あるもの”を発見したことから、思いがけず社会の不正に立ち向かうこととなる。
背景にあるのはブラジルの根深い政治腐敗や権力汚職、凄まじい貧富の格差。犯罪組織も顔負けな警察の悪行三昧に背筋が凍る。そんな暗く重たい題材を軽やかな躍動感で包み込んだ点が、見方によっては「スラムドッグ$ミリオネア」を彷彿とさせる。
子供たちへ託された変革の願いが、やがて未来の希望へと繋がっていく。ご都合主義的な展開も少なくないため、恐らく賛否は分かれるかもしれないが、その爽快な後味は社会派ドラマを敬遠しがちな観客層にもアピールすることだろう。
少年たちは身体と精神の軽さで駆け抜ける
13歳、14歳の少年たちの痩せた身体は、大人達の暴力や銃弾にさらされたときに、あまりにか弱く脆そうに見える。が、その身体の薄さと軽さゆえに、少年たちは大人たちの身体が侵入できない細い道や、大人たちの体重を支えられない屋根の上を、軽やかに駆け抜けて行く。少年たちが目指すのが、悪を倒すことではなく、彼らが行きたい場所に行くことなのが、痛快。
撮影は「シティ・オブ・ゴッド」の続編「シティ・オブ・メン」や「闇の列車、光の旅」を手掛けたアドリアーノ・ゴールドマン。なので、少年たちの住む貧民街の闇の手触りはざらつき、ときには暗すぎるようにも見えるが、朝を迎えたときの光の強さ、明るさもくっきりと映し出す。