トゥームレイダー ファースト・ミッション (2018):映画短評
トゥームレイダー ファースト・ミッション (2018)ライター7人の平均評価: 3
「アイドル・アクション映画」としておすすめ
ずーっとアリシア・ヴィキャンデルにカメラ=視線が集中しているのが潔い。ララ・クロフトの前任者アンジーがザ・肉体派だとしたら、こちらは美少女がきりきりにカラダを絞った趣。序盤のチャリンコぶっ飛ばしから相当な肉弾ぶりを発揮してくれ、ノリは『インディ・ジョーンズ』+『ランボー』、意外にジャッキー映画の匂いも。マジでめっちゃ頑張ってますよ!
日本の沖にある絶海の孤島に上陸し、古代の女王ヒミコの墓に向かい始めてからは、『リリーのすべて』や『エクス・マキナ』の高偏差値ぶりが嘘のような世界観へと展開するが、そこは「評価」の目ではなく大らかな気持ちで。理屈抜きモードなら星はひとつプラス。続編もぜひ!
アリシア・ヴィキャンデルのスター性が光る
アンジェリーナ・ジョリーのバージョン同様、今作を見る理由は主演女優の魅力。ビデオゲームのキャラクターでもここまで引っ張れるのは、さすがオスカー女優かつ真の映画スター。アクションは、お腹いっぱいになるほど満載。#TimesUpの時代、女性のアクションヒーローが暴れまわるのは大歓迎に違いないのだが、「ワンダーウーマン」のようにときめかないのは、新鮮さがないせいか。最後が「次に続く」で終わるところも、これまたハリウッドのお決まりパターンだ。
ぶら下がるアリシアのうめき声が妙に印象深い
原作ゲームの設定とは異なるようだが、主人公のララ・クロフトがトレジャーハンターとなるまでを描く物語。
主人公を演じたアリシア・ヴィキャンデルは、旧シリーズで同役をやったアンジーとは違い、最初はあまりの華奢さに驚かされるが、腹筋の割れ具合にはただものではなさを感じさせるし、超人ではない女性が逞しく成長していくその変貌ぶりは、印象的なうめき声と共に見応えがある。
しかしながら、緊迫感が伝わりにくい探検ミッションとぶら下がってばかりのアクションが続くことには、原作ゲームを意識しているとはいえ、映画としてもっと飽きさせない工夫が欲しかった。
トレードマーク的武器の入手方法も、ちょっと残念。
秘宝はまさかの卑弥呼さまー!
中国映画界に大きな影響を与えたシリーズが復活。初代のアンジーに比べると、顔力が弱いアリシア・ヴィキャンデルだが、バキバキな腹筋などのカラダづくりの末、持ち前の演技力で、二代目ララ・クロフトをそつなくこなしている。“卑弥呼の墓”という、ややタイムリーなねたも悪くないが、『THE WAVE/ザ・ウェイブ』のディザスター感が買われての抜擢と思われるローアル・ユートハウグ監督の演出は、予想通りあまりに散漫。ドラマティックなはずの父親との再会も盛り上がらず、『ジオストーム』に続くダニエル・ウー案件でもあるのに、そこも生かしきれていない。総合的に、前シリーズのようなケレン味に欠けているのも残念だ。
スーパーヒロインではなく、“人間”ララの冒険談
まず超タフで超セクシーなアンジェリーナ・ジョリー版のイメージは捨てた方がベター。このリブートは主人公ララ・クロフトを地に足の着いた女性としてとらえている。
裕福な親元を離れ、下町で独り暮らしをしている自転車便のメッセンジャー。総合格闘技のジムに通っているので格闘は得意だが、それを除けば普通の若い女性。危機また危機の冒険行では傷だらけになり、それでも突き進む。そんな必死さがジョリー版とは異なる妙味で、感情移入もしやすい。
アリシア・ウィキャンデルの華奢な(しかし鍛えられた)肉体はタフネスだけでなく、痛みや苦しみもしっかり伝える。ジョリーとは違う意味での熱演は、一見の価値アリだ。
親しみやすくなったララ・クロフトと作品のムードの相性は?
過去2作のララ・クロフトは、アンジェリーナ・ジョリーのサイボーグ的な持ち味が生かされていたが、今回のアリシアは過激なスタントを披露しながらも、どこか儚(はかな)げで、何かに迷っている印象もちらつき、その部分は感情移入しやすいと思う。激しさと繊細さが美しく混在したヒロイン像は、シンプルに好感がもてる。
一方で、これはゲームが原作なのでアクション、および謎解きの大がかりなシーンには、ゲーム感覚の奇想天外なノリも強調される。リアリティを増した主人公と、ぶっとんだ仕掛けをクリアしていく冒険。その両者の組み合わせをどう受け止めるかによって、作品に乗れるかどうかも変わってくるだろう。
ヴィカンダーの5キロ増量筋肉が有無を言わせない
主人公の筋肉がよく使われる。崖に片手でぶら下がって身体を持ち上げる。離れた地面まで跳躍する。そのような身体中の筋肉を極限まで使うアクションが多く、その時の筋肉の緊張が、主人公の切迫した心情と一緒に、リアルに伝わるように描写されているので、見ているこちらの身体にも思わず力が入ってしまう。このアクション演出が、この頃よく目にする超人的身体能力を持つスーパーヒーローたちの超絶アクションとはまったく違う感触で、新鮮。物語の背景が都市ではなく大自然であることも、この演出に似合う。アリシア・ヴィカンダーの鍛えられた筋肉が、この演出に説得力を与えている。