イコライザー2 (2018):映画短評
イコライザー2 (2018)ライター6人の平均評価: 3.5
19秒で悪を断つ、というコピーがなんとも謎
元CIAのワンオペ仕置人が悪を成敗する痛快作からは、D・ワシントンとA・フークワ監督のバディっぷりが伝わってくる。アパートに住む少年との父子関係にも似た友情や主人公マッコールの過去を知る人々を登場させたことで主人公の人間性が前作より濃くなっているのも魅力のひとつ。デンゼルはアクション場面では64歳には思えない動きを見せるが、戦う前に時計を見るマッコールの癖だけは理解不能。戦闘後には時計を見ないし、そもそも19秒で敵を倒してない!? 宣伝コピー、変じゃね? 本筋とは関係ない逸話が加えられているが、殺伐としたマッコールの人生にちょっとした灯をともす、心温まる感じがすごく好き。
『ベスト・キッド』育成に懸ける仕事人
デンゼル・ワシントン初の続編モノとなった本作だが、主人公の表の職業がホームセンター勤務からタクシー運転手に変更したように、新規にも優しい作り。しかも、イスタンブール行き列車が舞台の『007』風オープニングからスケールアップの予感。もちろん、ハリケーンの中、見えない相手の一歩先を読みながらのクライマックスは見応えアリだが、その直前、かつての仲間に脅迫された後の空気感がいい。とはいえ、前作より11分、上映時間が短くなったものの、今度もムードを重視してか、テンポの悪さは相変わらず。ヤバい話に足を突っ込む高校生との『ベスト・キッド』な物語も決して悪くないが、かなりしつこい。
再び問答無用の強さが炸裂!今回は意外な側面も
寡黙で無愛想な地味な男が、実は凄まじい戦闘能力を持ち、いざ戦えば法律も倫理も無視して暴走、相手に反撃の機会すら与えない。この問答無用の強さが、主人公の魅力。そんなキャラクターを、善人役の多いデンゼル・ワシントンが演じることで、さらに凄みが増していた。
その主人公を同じ監督が描く続編。なので、前半はこの豪腕ぶりが炸裂。そして後半では続編らしく、前作では見られなかった主人公の側面を描写。敵には、主人公と同等の力量を持つ人物を配置。戦いの背景には、大自然の脅威もプラス。それにつけてもフークア監督、今回もスピードよりも重量感を重視。これがこの監督の好みに違いない。
クールなのに芯は熱い、作品のムードにブレなし
現在63歳。さすがに動きのキレに翳りが見えるデンゼルだが、盟友のアントワン・フークアが撮ると、じつに見せ方がうまい。撮る方向や編集のタイミングで「最強デンゼル」をスクリーンでキープさせている。
基本は前作と同じなのだが、ホームセンター勤務からタクシードライバーに変わったことで、日常の道具を必殺任務に応用する面白さは前作の方が上だったかも。それでも自室の隠し部屋を使った敵との闘いなど、ハラハラさせる瞬間は何度も訪れる。近所の青年との擬似親子愛も、クールに描きつつ芯の部分は熱い。見せ場の配分など構成もアクション映画の教科書のようなので、予想外ではないが、とりあえず満足感は味わえるのではないか。
今なぜ再びイコライザーなのか?の答えは明確
これまで続編物とは無縁だったフークア監督とデンゼル・ワシントン。なぜ今、イコライザーなのか?と疑問に思っていたのだが、本編を見て大いに納得した。タクシー運転手として市井の人々を見守りながら、世に蔓延る不正を正して弱者を救うべく暗躍するアメリカ版必殺仕事人マッコール。ベルギーで起きたCIA協力者暗殺事件とホロコースト生存者の無念を重要な柱としつつ、複数のエピソードを絡ませていくことで浮かび上がるのは、政治や社会が「正義」と「公正」を軽視するトランプ政権下のアメリカに対する違和感と、その行く末に対する強い警鐘だ。今こそ我々はイコライザーを必要としている。それは現政権下の日本社会も同様だろう。
極小値の美しさから、こってりハリケーン
ミニマム&シャープな傑作ヴィジランテ物としての第1作を超絶愛していた身からすると、冒頭マッコールがトルコ鉄道に乗ってる時点で「嗚呼スケールアップしちゃったか~」と心が曇る。しかし頭の切り替えが肝心。市井の若者との交流(今回は『ムーンライト』のA・サンダース)や「読むべき100冊」(2015年の名著、T・コーツ『世界と僕のあいだに』他)など前作の枠組みを踏襲しつつも、その“拡大”ぶりはとんでもない活劇の快楽に向かっていくのだ!
何はともあれクライマックスである。台風びゅうびゅう。緻密な空間設計かつ荒唐無稽なアクションを「歌舞いてる」方向に変えてきた。もう最高。やはりA・フークアは只者ではない!