X-MEN:ダーク・フェニックス (2019):映画短評
X-MEN:ダーク・フェニックス (2019)ライター5人の平均評価: 3.4
ダークサイドに堕ちたジーン・グレイが人類最大の脅威に!
宇宙空間で謎の熱放射を浴び、闇の別人格「ダーク・フェニックス」が覚醒したジーン・グレイ。その暴走を止めようとするX-MENたちと、彼女を利用せんとする異星人の闘いが描かれる。原作シリーズでも特に人気高い「ダーク・フェニックス・サーガ」の映像化。『ファイナル・ディシジョン』でも一部プロットが流用されていたが、こちらの方が原作により忠実という触れ込みだ。とはいえ、実際はかなり簡略化されており、予定調和が目立つことは否めない。重要なメインキャラの死も意外とアッサリ。同じくシリーズに一旦終止符を打つことになった『アベンジャーズ/エンドゲーム』と比べると、いまひとつエモーショナルな盛り上がりに欠ける。
ダークだからこその感動が宿る、別次元のX-MEN
『X-MEN』シリーズは前作『アポカリプス』で時代を一巡して完結した。よって本作は従来の設定を踏まえ、別次元を描いたものであることを、まず認識しておきたい。
別次元だからこそ新鮮なものを見ることができる。注目すべきは、プロフェッサーXを中心にまとまっていたはずのX-MEN内の葛藤。愛と憎、怒りと悲しみが交錯し、内部分裂をもたらす、そんなドラマに引き込まれる。
アクションこそ従来通りダイナミックだが、物語は内省的でダーク。裏を返せばミュータントの描写はこれまで以上に人間臭い。だからこそ、ラストには感動が宿る。マグニートーのアクションがとてつもなくクールであったことを付け加えておきたい。
その力を使うとき、ジーンの顔が誇りと喜びに輝く
まだ少女の面影を残すジーン・グレイが、自分で制御できないほどの強大なパワーを手に入れてしまい、片手をかざすだけでプロフェッサーXやマグニートーをも超える力を発揮するようになる。彼女はその力に怯えもするが、しかしその力を使うとき、その顔は誇りと喜びに輝き、身体の内部から光が溢れ出す。この光景が美しい。
監督は"ダーク・フェニックス・サーガ"を描いた06年の「X-MEN:ファイナル ディシジョン」に脚本で参加して以来、この物語を自分の手で描くことを熱望し、本作で実現したサイモン・キンバーグ。コミックや06年の映画とは違う、彼が描きたかったダーク・フェニックスとは何か。その答がここにある。
むっちゃ不機嫌なジーン
原作では「魁!!男塾」ばりに何度も死んでは甦るジーン・グレイを軸にした、お笑い要素なしのシリアス路線。そのためか、ほぼゾンビ化した宇宙人の存在など、ペラッペラで粗い脚本が目立ち、完結編にしては後味さっぱり。そこが全米で叩かれた理由かもしれないが、ボロボロになり、最終的に美味しいところ取りのマグニートーに、「これじゃX-WOMENやん!」とミスティークにツッコまれるクズなプロフェッサーXらの関係性も含め、キャラ萌え映画のとして見応えアリ。やっぱりアガるハンス・ジマーの劇伴も手伝って、スケールは違えど、『エンドゲーム』同様、これまでシリーズを観てきた“ファン感謝祭”に仕上がっている。
アベンジャーズだけじゃなく、こっちも一応、完結ですよ!
一応の完結編として何かと『アベンジャーズ/エンドゲーム』と比較したくなるのは仕方ない。冒頭のミッションから、各キャラのパワーがMAX効果。しかも超絶スピーディな連携プレー。ゆえに誰がどんな能力かを把握して向き合うことが必要かと。
ジェンダーなど現代ならではのテーマにも切り込むが、初期作に濃厚だった能力ゆえの悲しみや人間との対立はかなり薄めになった。
長年、シリーズを支えたサイモン・キンバーグの初監督作ということで、ポイントは押さえているものの冒険は少なく、オーソドックスな味わい。仲間と闘わざるをえない苦悩や自己犠牲で、心ざわめく強烈な演出も見たかったが、アクション映像は安定の見ごたえである。