エスケープ・ルーム (2019):映画短評
エスケープ・ルーム (2019)ライター5人の平均評価: 3.2
あまり深いこと考えずに楽しむべき脱出ゲーム映画
ネットで話題の体験型脱出ゲームの招待を受け、とあるオフィスビルへ集まった6人の男女。しかし、それは「脱落=死」を意味する命がけのサバイバル・ゲームだった…!ということで、誰が何のためにこんなゲームを?という疑問を含め、既存のサバイバル映画の寄せ集め的な印象は否めず、そもそも普通のビルにどうやったらこんな大掛かりな罠をセッティングできるんだ!?という突っ込みどころも多々ありだが、バラエティ豊かで凝りまくった各ステージの趣向は面白い。あまり深いこと考えずに楽しむべきだろう。『ロスト・イン・スペース』のテイラー・ラッセルを筆頭に、テレビシリーズでお馴染みの役者が揃うのも海ドラ・ファンには嬉しい。
スリリングではあるけど、先が読めるのが残念
V・ナタリ監督の『キューブ』を思わせる密室脱出劇で、閉じ込められた6人のサバイバルには『ファイナル・デスティネーション』風味もある。ステージをクリアする毎に鍵を見つけるのが難しくなるゲーム的な要素も今どき。スリリングなホラーだし、監督の狙いも分かるが、密室の仕掛けがデカすぎるのが難点だ。深い川があったり、巨大パズルとなっている建物の構造はいかに? 主人公たちを閉じ込めた側の懐具合や目的が気になって、肝心の脱出劇への集中が途切れてしまう。サバイバル中にたくましく成長するゾーイ役のT・ラッセルは頑張っているが、登場人物のキャラ設定が定番すぎて先が読めるのも残念。続編に期待?
驚異の"殺人部屋"を体感させる密室スリラー
『CUBE』のゲーム性と『ソウ』の残虐性、『13/ザメッティ』の高みの見物的エッセンス。それらを混ぜ合わせ、流行の脱出系ゲームに当てはめたのが、この密室スリラー。
ゲームのステージは灼熱型、極寒型、迷彩型など多彩だが、舞台の気温や迷宮感をキッチリと体感させる点がいい。汗や悪寒、荒い息遣いなど、登場人物の生理をこまやかに描いたことで、それは観客体感型へと変換される。
プレーヤーたちの疑心暗鬼、部屋の凝った仕掛けに加え、彼らの過去を調べ上げているゲームの仕掛け人の存在もスリリングで目を引く。役者陣はこれからの注目株ばかりだが、とりわけブラック・アクターふたりの表情豊かな表現力に唸った。
「ソウ」「CUBE」系設定にかなり大胆なヒネリあり
基本的設定は今や定番となった「ソウ」「CUBE」系だが、かなり大胆なヒネリあり。見知らぬ者同士が集められ、生き延びるために難問を解いていきながら首謀者を探す、というフォーマットは守りつつ、それぞれの問題と解き方に頭脳系身体系などのバリエーションがあるのに加え、途中の展開に斬新なサプライズがある。全米の好評を受けてすぐに続編が始動したのも納得。その続編は本年11月全米公開が決定ずみ。
出演者が 「ロスト・イン・スペース」のテイラー・ラッセル、「Maevel デアデビル」のデボラ・アン・ウォール、「ゾンビーワールドへようこそ」のローガン・ミラーとこのジャンルお馴染みの面々なのも楽しい。
1周回って楽しめる「リアル脱出ゲーム」
DVDスルーを含め、有象無象に作られたシチュエーション・スリラーだが、『ヘルレイザー』のルマルシャンの箱のようなパズルボックスが発端となる本作は、グロ・ゴア描写ほぼなしのPG-13。かなりストレートで、ライト感覚な『CUBE』×『SAW』といえるだろう。6人の男女が挑む「灼熱地獄」から「極寒地獄」、「逆さま地獄」……といった各部屋をめぐる展開に既視感はあるものの、『メイズランナー』の要素も入れるなど、いろいろと練られている。「リアル脱出ゲーム」の登場もあり、続編を踏まえてのラストまで、マニアでも1周回って楽しめるうえ、『カイジ ファイナルゲーム』にガッカリした人にもおススメ!