クワイエット・プレイス 破られた沈黙 (2020):映画短評
クワイエット・プレイス 破られた沈黙 (2020)ライター8人の平均評価: 4
ストーリーもビジュアルも格段にスケールアップ!
前作のサプライズヒットを受けて製作された続編。バジェットも約3倍に膨らんだそうだが、なるほど、デイ1の大規模な群衆パニックをスピルバーグ版『宇宙戦争』ばりのスケールで描く、オープニングのフラッシュバック・シーンを見ただけでも一目瞭然だろう。いかにして音を立てずに敵から身を守るのかという、前作の基本的な約束事をしっかりと踏襲しつつ、希望を求めて外の世界へと飛び出した家族が、人類の存亡をかけた戦いへと挑んでいくストーリーにもスペクタクルな魅力が加わった。中でも反骨精神旺盛な長女ミリセント・シモンズの活躍が頼もしく、子供たちの成長とそれを見守り支える大人たちの物語としても見応えがある。
サバイバーは彼らだけではなかった!
一家族のサバイバルのドラマに徹した前作に対して、今回は彼らの以外の生存者たちも登場するのがミソ。
理想は共闘だが極限下ではそうもいかず、“音を立てたら即死”の状況下で一家はさらなる闘いを強いられる。未知生物だけでなく、他の人間への疑心暗鬼もスリリングな状況として機能。
クラシンスキー監督は前作と同様に、“こういう状況ではこう動く”という理詰めでドラマを組み立て、きっちりとスリラーを成立させた。E・ブラントの熱演はもちろん、聴覚障害を持つ長女にふんし、ドラマに大きなうねりをあたえたM・シモンズの頑張りも光る。
恐怖が支配する世界で重要なのは家族の絆
冒頭にフラッシュバックで前日譚を配置し、前作のエンディングへ続ける構成でJ・クラシンスキー監督が物語の全体像を把握&制御していることがわかる。ディストピア的な状況を家族で耐えてきたアボット家の人々が続編ではさらなる危険にさらされる。共闘していた家族が本作では別行動となり、孤独な戦いに直面した各人の恐怖と見る側のエモーションが増幅する。荒んだ世界で重要なのは、愛し信じられる家族なのだ。タフな母親と亡き父の意思を継ぐ長女、赤ん坊を守ろうと必死の長男の運命やいかに? 各人に迫る危機を繋ぐ巧みな編集で緊張感マシマシ。新キャラも登場するが、扱いが雑すぎ。長女役のM・シモンズの見せ場が多いのはいい。
今度は、出し惜しみなんてしません!
続編を作る気がなかったジョン・クラシンスキー監督だったが、“何か”を出し惜しみせずに暴れさせる、『宇宙戦争』ばりの“DAY1”から掴んでくるなど、原題を「PART2」にするぐらい、ただならぬ気合を感じさせる。ぶっちゃけ、やや『マーズ・アタック!』入ったストーリーはあまり進まないが、廃工場や孤島などのシチュエーションにおけるサスペンス演出は相変わらず巧く、クライマックスの同時中継は前のめり必至。また、前作ではお荷物キャラにも見えた長女リーガンの成長っぷりは目を見張るものがあり、母親役のエミリー・ブラントをも喰う勢い。監督の「まだまだ撮るぞ!」と言わんばかりのラストも含め、★おまけ。
スリルの配分、人物の成長で、万全の続編
前作の物語を反芻して向き合ったところ、冒頭シーンで軽く頭が混乱。しかしこの混乱こそ作品の肝だったとすぐに納得し、あとはジェットコースター的流れに乗り、唐突なドッキリ描写に素直に全身が反応し…と、「音を立ててはいけない」というルールが「当然」になったことで斬新さには欠けつつも、エンタメスリラー見本のような続編である。
母子4人のサバイバルは、父を失ったことで前作以上に熾烈。しかも幼な子の存在が予想どおり危機を招くとあって、息が止まる恐怖の瞬間が何度か訪れる。しかし「経験」によって各キャラの戦う能力も上達。子供たちの頼もしさが、軽いカタルシスを与えてくれるルシ、自己責任に苛まれるドラマも切ない。
あえて正攻法のサスペンス演出で魅了する
あえて正攻法のサスペンス演出が、このシリーズの醍醐味。前回同様、思ったような展開が続々でいてそれがしっかり面白い。前回は脚本家3人中の一人だった監督クラシンスキーが、今回は単独で脚本を担当するが、ストーリーの進め方の丁寧さは前作と同じ。ちゃんと前振りがあって、それに基づく出来事が起きる。前振りの段階でそれが使われることを予測させつつ、それが面白さを損ねることがない。もうひとつ魅力的なのは、子供たちのいい表情。娘の"お父さんが大好き"な物語も、息子の"臆病だけどいい子"の逸話も魅力的で、ミリセント・シモンズとノア・ジュープが大人の演技派俳優たちに負けないいい顔をする。これもこの監督の持ち味か。
不安で変わった世界のお話
アメリカで、新型コロナウィルスのパンデミック後最大のヒットを記録しているとのこと。
分かる気がします。この映画はある事で、ガラッと変わってしまった世界の物語です。
これは今、私たちが目の当たりにしていることでもあります。そのために絵空事には思えない感情移入をしてしまいます。
なにか、こう息を殺していないといけないような、外部からの圧迫感は、自粛中に心の底で感じていたものと通じる部分があります。ホラー映画ではありますが今を映した映画でもあります。
1作目のファンを満足させる緊張感満点の続編
もともと続編を作るつもりはなく、サプライズヒットだっただけにむしろあのまま終えたいと思っていたと、クラシンスキー。だが、彼は実にすばらしい続きを思いついてくれた。もっと予算をもらえたのが明らかな今作では、恐怖シーンが立て続けに起こり、椅子から飛び跳ねさせられてばかり。1作目で説明されなかったクリーチャーが初めてやってきた日を描く冒頭部分から、いきなりぐいぐい引き込む。今回は、ミリセント・シモンズとノア・ジュープの見せ場がたっぷりで、彼らの演技力にも感動させられる。「よりビッグに」は続編のお約束ながら、今作はよりディープにもなった。次が楽しみ!