コカイン・ベア (2022):映画短評
コカイン・ベア (2022)ライター4人の平均評価: 3
ラリックマ大暴走!
人体破壊など、エリザベス・バンクス監督なりの悪趣味要素が随所に出ている動物パニックもの。肝心なラリックマに関しては、出オチな部分もあるが、そんなクマにも重なる子どもたちの冒険譚と母親(『ジャイアント・ベビー』で映画デビューしたケリー・ラッセル)の愛が描かれたり、顔面凶器なレイ・リオッタが最期の怪演を魅せてくれたりと、1985年の時代設定に合わせた80`s映画のごった煮感が心躍らせる。すっかり役者の顔つきになってきたオシェア・ジャクソン・Jrもいい味を出すなか、救急隊員の件など、コメディとしても、ユルいところはしっかりユルい。なんだかんだ、いい話にまとめてしまう強引さも悪くない。
エリザベス・バンクス監督が快進撃!
クマがコカインを過剰摂取して大暴れ。それに巻き込まれる人々は、マヌケなキャラばかり。時代はお気楽な'80年代。かなりバイオレンスでスプラッタで、そのうえ良識ある人々が眉をひそめるバッドな笑いがたっぷり。そんな映画の監督を務めたのが、ジェームズ・ガン監督の盟友、エリザベス・バンクスだというのもポイントだ。
バンクスは、彼女が出演したガン監督のホラーコメディ『スリザー』(06)が大好きで、ずっとああいう映画を撮りたいと思ってたと発言。脚本は彼女ではなく『ザ・ベビーシッター~キラークイーン~』の脚本に参加したジミー・ウォーデンだが、その発言通り、『スリザー』っぽい味が満喫できる。
「やりすぎ」を求める人の期待に存分に応えるクマの暴走
大量のコカインでハイになった(であろう)クマというのが、実話が基と聞いてまずびっくり。最近の日本での凶暴クマのニュースが頭をよぎったりもするのでは?
最初の犠牲者が出るシーンから、その描写には遠慮ナシで、徹底的にクマの暴走を描く作り手の姿勢に敬服。「この人は助かるだろう」との予想を軽々と超え、目を覆うバイオレンスと(いい意味で)バカバカしいセンスの絶妙ブレンドで、モンスターパニック映画の正統派を突き進む。
デジタルによるクマの造形は、もはやアートの域。目の奥から、野生動物が「いっちゃってる」感覚まで伝わってきた! 人間たちのコカイン争奪戦はとにかくチョロいノリで、ちょうどいい箸休めに。
笑いと残酷さが散りばめられたB級娯楽映画
いかにもフィル・ロードとクリストファー・ミラーの製作らしい作品。実話にインスピレーションを受けているとはいえ、“コカイン”と“熊”の組み合わせの妙から広がっていったのであろうことは明白。設定の面白さが売りなので話は薄いものの、90分間にショック、笑い、残酷さが散りばめられている。自分たちが何をやっているかきっちりわかっているB級映画。ロードとミラーが監督をクビにされた「ハン・ソロ」つながりのオールデン・エアエンライク、「フロリダ・プロジェクト」の頃から成長したブルックリン・プリンス、残念にも昨年お亡くなりになったレイ・リオッタなど、ユニークで幅広い顔ぶれのキャストも楽しい。