ヘルボーイ (2019):映画短評
ヘルボーイ (2019)ライター6人の平均評価: 3.3
とりあえず、デル・トロ版はおさらいしとけ!
ゲロ吐き霊媒少女・アリスに、サッシャ・レインをキャスティングしただけでも高評価だが、原作のマイク・ミニョーラが脚本に参加してるとなれば、期待倍増のリブート。グロ描写多めは嬉しいが、キャラ設定は端折られ、専門用語が畳みかけられるなど、最低限デル・トロ監督版をおさらいしていないと、かなり厳しい仕上がりに。ある意味、「ワンピース」にも近いマニア相手の商売は悪くはないが、エンドロール後まで、小ネタたっぷりなのは、全米大コケ要因のようにも。一方、やたら楽しそうにミラジョボが美魔女を演っているのは、ニール・マーシャル監督の作風が旦那(ポール・W・S・アンダーソン)に似てるからか?
とりあえずN.マーシャルの復活を喜ぼう。
久々のニール・マーシャル長編劇映画というだけで胸は高鳴るってもの。相変わらず肉片がやたら飛び散るゴア描写はやりまくりだが、あのデル・トロ版が大きく立ちはだかるのは仕方ないところ。原作が一緒なだけに同じエピソードも出てくるけど、「みなさんデル・トロ版観てるでしょ?ストーリーの都合もあるから一応やっとくね」って感じですっ飛ばす(そもそも登場するなりヘルボーイ大活躍)。こっちの方が原作に近いテイストなのかも知れないが、やはりデル・トロ版のチャーミングさを知っていると、どうしても物足りなく感じるのだ。サッシャ・レインはかなり印象に残るが色恋どうのじゃなさそうだし。それにあの相棒が居ないのはキツい。
原作者マイク・ミニョーラ版ヘルボーイ、降臨!
うわ、この光景はスゴイ!と思わせる場面が特に後半、何度もある。その光景、中でもクリーチャー造形には、コミック原作者マイク・ミニョーラのビジュアル・センスが色濃く反映されたもの。そう、本作はこれまでのシリーズにも製作で参加していたミニョーラが、これまで以上に自分のやりたかったことをやった映画化なのだ。だからアーサー王伝説、ルイス・キャロル、ロシア民話などの伝説を増量。クリチャー造形はよりグロテスクでありつつミニョーラらしいクールさがある。血液と血飛沫は大幅増量だ。
監督はニール・マーシャル。彼の近未来アクション「ドゥームズデイ」のノリを発揮して、若返ったヘルボーイとの相性もいい。
デヴィッド・ハーバーの新ヘルボーイは違和感なし
ロン・パールマンに代わってデヴィッド・ハーバーを主演に迎えた、『ヘルボーイ』シリーズの仕切り直し的なリブート版。このところ『ゲーム・オブ・スローンズ』などテレビで活躍していたニール・マーシャル監督の、およそ9年ぶりの長編劇映画復帰も嬉しい。アーサー王伝説や妖精伝説、東欧の魔女伝説などを下敷きにしつつ、人間に育てられた悪魔の子ヘルボーイが、人類滅亡を防ぐため邪悪な魔女と死闘を繰り広げる。ギレルモ・デル・トロの旧シリーズと比較すると見劣りすることは否めないが。ライトなハリウッド・エンターテインメントとして普通に楽しめることは確かだろう。デヴィッド・ハーバーのヘルボーイも違和感はない。
デル・トロ版とは異なる豪快・地獄ライド
イギリスを主要な舞台としているせいか、アメコミ映画としては英国臭が強く、アーサー王伝説の絡みも含めて独特の空気感。デル・トロ版との大きな違いは、まずそこにある。
そして全米R-15指定に押し上げられた強烈なバイオレンス。ロンドンの市街地を地獄絵図に変え、魔物が人体を貫いたり、引き裂いたりのロンドン市街地を地獄絵図に変えるクライマックスは圧巻だ。
『ゲーム・オブ・スローンズ』で名を上げて久々に映画に復帰したN・マーシャル監督(『ディセント』)のキレのある演出が冴える逸品。デル・トロ版以上のヘル感覚は、全面協力した原作者ミニョーラの求めたものでもあるのかもしれない。
二代目襲名披露
ギレルモ・デル・トロとロン・パールマンが抜けたのでどうなるかと思いましたが、原作のマイク・ミニョーラが製作総指揮として残っていることもあってちゃんと「ヘルボーイ」になっています。
監督が「ディセント」のニール・マーシャルというのもいいチョイスでした。
そして、ラスボスとして登場するミラ・ジョヴォヴィッチの存在感が映画を盛り上げます。その風貌から、現代劇にはまらない彼女ですが、こういうファンタジーの世界では抜群に映えます。