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ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密 (2019):映画短評

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密 (2019)

2020年1月31日公開 131分

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密
Photo Credit: Claire Folger Motion Picture Artwork (C) 2019 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ライター9人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.2

なかざわひでゆき

保守的で排他的な現代社会への痛烈な風刺をこめた推理サスペンス

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 一代で莫大な財を成した世界的ミステリー作家が変死体で発見され、ワケありな親族ばかりが揃った大豪邸を舞台に、クセモノ名探偵が犯人探しに挑むこととなる。アガサ・クリスティにオマージュを捧げたコメディ・タッチの推理サスペンスだが、その巧妙に描きこまれた謎解きの面白さも然ることながら、だんだんと真相へ近づいていくにつれ、差別と格差が広がるトランプ時代の保守的で排他的な現代社会、もっといえばアメリカのオルトライトや日本のネトウヨのような連中に対する、痛烈なまでの風刺と皮肉が浮かび上がっていく。オールスターの豪華な顔ぶれも見どころ。『新スーパーマン』のマーサ・ケントことK・カランが懐かしい。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

謎解きも笑いも、とにかく上手い!

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 アガサ・クリスティばりの高度なミステリー設定。これがオリジナル脚本であることに驚く。

 基本はマーダー・ミステリーで、証言の差異をジワジワとあぶり出し、ボタンのかけ違いを修正して事実へと導く巧妙な構成。殺伐感は控えめで、キャラの人間味やユーモアを押し出されている点が上品で、これまた上手い。

 オールスターキャストも、それぞれの個性が活きて妙味。言われるほど悪くない『最後のジェダイ』で一部のSW原理主義者にボロクソに叩かれたR・ジョンソン監督だが、お得意のミステリーのフィールドでは活き活きとした演出が生える。エンディングで流れるストーンズの曲も歌詞を把握していれば上手いとしか思えない。

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森 直人

温故知新の大胆リフォーム

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

さんざん使い古されて手垢がつきまくったクリスティ流儀のテンプレート。それを新鮮に仕立て直したことに驚嘆! なるだけ小ネタの数を詰め込み、大きくハネる仕掛けを段階的に設置。相当際どいところを攻めつつ、ぎりぎり見事なバランスでコースアウトせずに突っ走っていく。

本作の味わいを一言でいうと「可愛い」。実を言うとミステリーの緻密度は意外&絶妙にユルく、愛嬌優先なのが勝因。出世株R・ジョンソン監督は最も得意なサイズの映画を手にしたことで『BRICK』からの成長具合がよくわかる。英国人D・クレイグが米南部訛りの名探偵――から引っ張ったか、ローリング・ストーンズ『スウィート・バージニア』の選曲がまた渋い!

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くれい響

ダニエル・クレイグの『名探偵登場』

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

前作『最後のジェダイ』ではセンスの欠片も発揮できなかったライアン・ジョンソン監督だが、よく考えれば、デビュー作『BRICK ブリック』はダシール・ハメットへのオマージュたっぷりのミステリで、2作目『ブラザーズ・ブルーム』はギャグ満載のコンゲーム映画だった。アガサ・クリスティ風正統派ミステリとして始まる本作は、その2作の要素をブラッシュアップし、好き嫌いはあるものの、とにかく下世話で笑わせる。豪華キャストのなか、MVPは「セーターブック」が欲しくなる(!)クズな放蕩キャラで笑いを取るクリス・エヴァンス。痛快すぎるラストも含め、“ダニエル・クレイグ版『名探偵登場』”といえるだろう。

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山縣みどり

古典ミステリーを現代風にアレンジ

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

科学捜査の発展で殺人事件の謎解きも理数系っぽくなっているけれど、本作はアガサ・クリスティー的な人間の業や情緒面に重点が置かれている。しかも現在のアメリカが直面している移民問題や格差社会問題、セレブ病ともいえる承認要求などが盛り込まれていて、単なる謎解きミステリーとは一線を画す味わいだ。しかもヒロインの特異体質といった笑える要素も散りばめられていて、R・ジョンソン監督の守備範囲の広さを実感できる。D・クレイグやC・エヴァンズら大物スターの肩の力を抜いた演技も素晴らしいし、アナ・デ・アルマスが意外なコメディエンヌぶりを発揮し、とってもチャーミング。

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村松 健太郎

温故知新の絶品ミステリー

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

『9人の翻訳家』に続いて公開される、こちらも極上のミステリー。この中に犯人がいるという古典的な要素に、ダニエル・クレイグ演じる曲者探偵が登場します。
一見すると古典的な英国ミステリーの要素が感じられますが、その一方で移民問題などを取り込むなど現代のアメリカをさらりと描いて見せます。
『最後のジェダイ』で新三部作の戦犯の一人になってしまったライアン・ジョンソン監督の名誉挽回となった一級エンターテイメント。一つ目のトリックは読めますが、その後がまた楽しいです。

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平沢 薫

"アガサ・クリスティーあるある"の中に隠し味が

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 まず、アガサ・クリスティーの小説そっくりの様式が楽しい。大富豪の死。クセのある家族たち。彼ら全員に富豪の死で利益を得る事情があり、誰もが怪しい。そんな"クリスティーあるある"大会に思わずニヤリ。そのうえ、登場人物全員を知名度も実力も高い俳優たちが演じるので、目の前に広がる画面がとても豪華。これも往年のクリスティー原作のオールスター映画へのオマージュだろう。
 加えて、本作ならではの魅力は、そんなクリスティー系の古風なミステリの中に、格差社会、移民問題など、現代ならではの社会情勢がそっと忍び込ませてあること。これらの問題を大声で主張するのではなく、さりげなく加味した脚本の妙味を味わいたい。

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猿渡 由紀

とにかく面白い!徹底的に考えられた傑作ミステリー

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

限られた空間の、限られた時間に、ある人が死んだ。殺したのは誰なのか?あるいは、警察が言ったように、自殺にすぎないのか。アガサ・クリスティふうの古典的な設定の今作は娯楽性満点で、かつ、2019年ならではの、社会格差、不法移民などの問題にさらりと触れる知的さもある。ストーリーそのものもすごく面白いが、最初のほうにちらっと出てきた会話のひとことが後で生きてきたりなど、本当に細かいところまで考え尽くされていることに、ひたすら感心。大勢いる登場人物もそれぞれ深く書かれていて、演じる俳優たちも抜群にうまい。「これぞエンタメ!」と言いたくなる大傑作だ。

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斉藤 博昭

俳優たちも楽しそう!「全編見どころ」も大げさじゃない稀な快作

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

富豪の謎の死と遺産を巡るアガサ・クリスティー的設定だが、オマージュを超え、しっかり手の込んだミステリーとして完成されている。証言の食い違い、それぞれの動機、アリバイの解明に、衝撃描写が過不足なくドラマに機能しているのだ。

そして謎解き以上に笑える瞬間が多すぎるのだが、これもふざけたレベルではなく、極上コメディに昇華。俳優たちが自分の個性を生かし、あるいは007やキャプテン・アメリカのようにイメージを逆利用して、楽しそうに怪演する姿に爆笑は抑えられず。二転三転するドラマの行方と、スターたちのキャラ立ち具合の見事な噛み合いは、まさに映画を観る喜び! こういう作品こそ映画賞でもっと評価されるべき。

この短評にはネタバレを含んでいます
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