レイニーデイ・イン・ニューヨーク (2019):映画短評
レイニーデイ・イン・ニューヨーク (2019)ライター7人の平均評価: 4
ウディ・アレンの愛すべきマンネリズムを楽しむ
いい意味で「いつものウディ・アレン映画」である。ひねくれ者のインテリ大学生ティモシー・シャラメと、ナイーブな天然不思議少女の恋人エル・ファニングが過ごすニューヨークの1日。恋人とのデートを楽しみたいティモシーだが、しかし大映画監督にインタビューするという彼女のミッションに邪魔され、ことごとく予定が狂っていく。若い男女のすれ違いを軸としたストーリーはあってないも同然。あくまでも、映画や文学のウンチクを交えた粋なセリフと、マンハッタンのお洒落スポットを舞台にしたノスタルジックなムードで楽しませる。この大いなるマンネリズムこそがウディ・アレン作品の醍醐味のひとつであろう。
騒動から遠いここ日本では、素直にロマンチック気分になれる?
ひととき現実を忘れてロマンチックな気分に浸りたい。映画にそんな欲望を叶えてほしかたったら、最適な一本かも。
経済的に恵まれた環境に育ち、恋人に「俺しか知らないNYを楽しませてやるぜ」なんて鼻につく主人公だが、その彼が逆に翻弄され、ちょっぴり惨めな状況になるのが、ウディ・アレン作品らしい微笑ましさ。近年は当たりハズレもある彼だが、急展開と各人物の心のヒダが創る痛快さで、持ち味全開である。現在、アレンが置かれる立場が、この作品の内容自体とあまりシンクロしないのも幸運か。
完全に監督が憑依してしまった、終盤のティモシー・シャラメの演技を観て、もう一本くらい一緒に撮ってほしかった…と、そこが残念。
このシャラメは観逃せない!
劇中、時折iPhoneが出てくることを除き、セリフもファッションも、70~80年代のウディ・アレン映画を観てるような感覚に陥る。とにかく、飲む・打つ・買うの三拍子揃ったヘビースモーカーの御曹司を、イヤミなくコミカルに演じるティモシー・シャラメがアレンの分身以上の役割を果たす。しかも、ピアノ弾き語りまであり、キャリア中ベストといえるなか、ミア・ファローのようなエル・ファニングに、マリエル・ヘミングウェイのようなセリーナ・ゴメスなど、ほかのキャラも申し分なし。過去作好きにはたまらないが、ヴィットリオ・ストラーロが捉えるN.Y.も素晴らしい。いわくつきの作品ではあるが、見逃すのは勿体ない!
ウディ・アレンの帰還
久しぶりにニューヨークに戻ってくるようになったウディ・アレン。本作はそんな中でも久々にゴリゴリのニューヨーク映画。そしてザ・ラブコメディといった軽やかなテイストの映画。
御年85歳になるウディ・アレンが、雨のニューヨークを舞台にティモシー・シャラメとエル・ファニングという今旬な二人をつかまえて、とんでもなくチャーミングな映画を創り上げました。
共演陣の癖のあるキャラクターも生き生きとしていて、終始ワクワクさせてくれます。
しかし、ニューヨークが舞台でギャツビーというキャラクターはそのまんま過ぎて、巨匠の遊び心に笑ってしまいます。
ウディ・アレン監督のホームカミング
TVシリーズやオペラ演出で仕事の幅を広げたW・アレンが原点のスクリューボール・コメディ@NYに戻ってきた。マンハッタンでデートするはずの大学生が次々とハプニングに遭遇し、愛が皮肉な方向へ進む。アレンにとってはお家芸だが、監督の分身であるギャツビーを演じたT・シャラメら若手が新鮮なテイストを加えている。コミカルでありながらロマンティックな雰囲気を醸し出すS・ゴメスが実に素敵だ。脇を固める役者も大物揃いで、非常に贅沢。久々のNY撮影がうれしかったようでアッパーイーストサイドからソーホーまで縦断し、御贔屓カーライルホテルやセントラルパーク などの名所も多数登場。バーチャルNY散歩にぴったり!
偏見を置いて楽しみたい、鬼才のマンハッタン恋物語
スキャンダルの真偽は不明だし、映画そのものの評価にそれをまじえるのはファアではないので、言及はしない。とにかく、W・アレンの映画を愛する人にはたまらないラブコメディだ。
愛し合う者たちの間に生じたボタンのかけ違いという、いつもながらのアレン節。ユーモアは健在だし、街に根差した映像作りもさすが。マンハッタンの雨の風景を魅力的に撮る、そんな視点の特異さを再確認。
何より80代半ばのアレンが若いカップルを主人公にした物語を、きっちり構築できることに驚く。ガニ股で歩くシャラメをイケメンのダメ男に据え、その成長をみずみずしくとらえた才腕。新味はないが、高レベルの安定感に脱帽するしかない。
ウディ・アレン映画の主人公が大学生だったら
かつてウディ・アレン自身が彼の映画で演じてきためんどくさい主人公は、大学時代にはどんな青年だったのか。それを、現在85歳で青春時代は遥か彼方にあるはずのアレン自身が監督して描き、なるほどきっとこうだったに違いない、と思わせる。主人公は学生でまだいろいろよく分かっていなくて、自分についても周囲についても誤解していたりするが、それがふとしたことから、分かり始める。そんな週末が、おとぎ話のような鮮やかな色彩と典型的な風景で描かれる。
ティモシー・シャラメがいつもの繊細な青年役ではなく、これからウディ・アレン的な大人になりそうなちょっと屈折した主人公を演じてすごく似合うのも、発見。