ゴジラxコング 新たなる帝国 (2024):映画短評
ゴジラxコング 新たなる帝国 (2024)ライター7人の平均評価: 2.9
人情に厚いヤンキー感丸出しのコングと無愛想でコワモテなゴジラ
すでに指摘されているとおり、「東宝チャンピオンまつり」化している本作。メッセージどころかドラマも怪獣への畏怖も皆無で、ひたすら怪獣同士のタッグマッチが繰り広げられる。人情に厚いヤンキー感丸出しのコングと無愛想でコワモテのゴジラが吹き出しでしゃべってもまったく違和感がないと思う。東西の人気怪獣、ゴジラとコングが揃い踏みするという価値を最大限にブローアップさせて、「映画は興行である」と徹底的に割り切った作品。観終わった後、「さ、ラーメンでも食べに行くか」という感想しか出ないのだが、それも一つのエンタメ。それにしても、コングの社会にもパワハラや上下関係があるのか……と嘆息してしまった。せちがらい。
ゴールデンウィーク向けのイベント映画としては最適
ゴジラが地上世界を、キングコングが地下空間を守ることで怪獣界のパワーバランスが保たれる中、人類の新たな脅威となる邪悪な勢力が出現する…ということで、モンスター・ヴァース最新作は良くも悪くも「東宝チャンピオンまつり」的な怪獣大饗宴。今回はゴジラとキングコングに加えてモスラも登場し、地上に地下にと暴れまわる。傑作『ゴジラ -1.0』を見てしまった後だけに、あまりにも大味な脚本や過剰なVFXが気になってしまうものの、とりあえず打ち上げ花火的なエンタメ大作としては全然アリ。家族連れやカップルでゴールデンウィークに映画館の巨大スクリーンで見るにはうってつけである。
エンタメ化が加速するモンスターバース
この映画に何を求めるかで、評価は分かれるだろう。怪獣バトルと都市破壊のスペクタクルを見たいなら、本作は確実にその欲求に応える。
地下世界での巨サル対決からして凄まじく、地上ではローマもリオデジャネイロも破壊される壮絶さ。ぶっ壊し方は『トランスフォーマー』のそれに近く、映像にはスピード感も宿る。この破壊で何人の犠牲者が出たのか気になるが、純正娯楽作にそれを問うのは無粋というもの。
人間側では疑似母娘のドラマも面白いが、ダン・スティーヴンスふんする獣医の、医療やら操縦やらバトルやらのハイテンションの大活躍が、このスペクタクルの中では何よりフィットする。
次から次へのサービス精神として楽しみたい
ゴジラとコングの映像全般は前作の流れから想定内も、「キング・オブ・モンスターズ」以来のモスラはビジュアル的に延長線上ながら、動き、全体の異様さが改めてトラウマになるインパクト(誉めてます)。
近作『ゴジラ-1.0』の後に改めて考えさせるのは、映画におけるVFXの意味。モンスターたちの戦いなど、ここまで物量作戦になると悪い意味での“作り物”感が上回るような。ウィンガード監督、前作の香港バトルでは重量感、タメを伴った演出が上手かったはずが、今回は矢継ぎ早で落ち着かず。あれもこれも…のサービス精神として楽しむべきか。
人間たちのドラマも二の次とはいえ、シーンや会話の繋がり、ちょい雑すぎて問題では!?
さらに「東宝チャンピオンまつり」化!
アダム・ウィンガード監督自身が、『ワイスピ』や『リーサル・ウェポン』と比較していたが、ビースト・グローブの登場で『トランスフォーマー』に近く、さらに「東宝チャンピオンまつり」化。『キング・オブ・モンスターズ』まで推していた神話性も見事になくなったことで、見どころはコング版『クローズZERO』を含む、怪獣プロレス。『シャン・チー/テン・リングスの伝説』に続き、キーパーソンで登場するファラ・チャンも、一時期レジェンダリー・ピクチャーズのミューズだったジン・ティエンのように爪痕残せず。ただし、ほかのキャラは、よりパリピ感が増しているだけに、「ウエーイ」と楽しむべし。
主人公は人間ではなく、巨大モンスター自身
アダム・ウィンガード監督による巨大モンスター映画の魅力は、主人公が人間ではなく、モンスターが主人公の物語を描いていることにある。その中で、モンスターが自分の力を発揮する時に感じている喜びも表現される。本作ではコングが何度も大きな跳躍をするが、そのたびに、彼がそれを気持ちいいと感じていることが、画面から伝わってくる。コングとゴジラが膨大な数の建造物を破壊する光景が見ていて気持ちいいのも、彼らの快感が伝わってくるからだろう。
監督が好きな60~70年代のゴジラ映画に寄せて、色調は明るく鮮やか。今回もイースターエッグは山盛り、バッドフィンガーなど懐かしのポップソングの数々も楽しい。
愛嬌が増しました
ゴジラとコングという二大巨頭が並び立つモンスター・ヴァース最新作。前作ではあくまでも対決路線を堅持していましたが、今回はW主役路線となり、どっちが強いかはあまり関係なくなりました。若干コングよりのエピソードが多い気がするのはアメリカ製だからでしょうか?まぁゴジラとコングが横に並ぶのですから、頼もしい事この上ありません。人間のキャラクターの比重が少なくなった分、二大巨頭の性格描写が増えました。類人猿の延長線上にいるコングはもちろんゴジラの方も随分人間臭くて愛嬌が増えました。昭和怪獣映画の空気感を感じました。