イントゥ・ザ・ストーム (2014):映画短評
イントゥ・ザ・ストーム (2014)ライター7人の平均評価: 3.6
超・体感型の看板に偽りなし
「ツイスター」から約18年、この間にVFX技術がどれほどの進化を遂げたのか、まざまざと見せ付けてくれる圧巻のディザスター・ムービーだ。
小さな低気圧の渦巻きがみるみるうちにメガトン級の竜巻へと成長し、あらゆるものをなぎ倒して吹っ飛ばして破壊していく。それも1つや2つじゃない。その凄まじさは、不謹慎だとは思いつつも、もはや笑うしかないほどのレベルだ。
携帯動画などの主観映像も交えながらのサービス精神旺盛な演出は、まさに“超・体感型”という看板に偽りなし。奇をてらわない控えめな人間ドラマも賢明な選択だ。クライマックスのアレに至っては、作り手の徹底したショーマンシップに感動すら覚える。
こんな大災害でも映画内では7人ほどしか死んでません。
ホラーではごく普通になったPOV。でも最も効果的なのはパニック映画だったかと今更ながらに気づかされる作品。ありていに言えば上出来のアトラクションなのだが、手持ち、据え置き、記録用、監視用等々含め、常に複数台のキャメラが回っているように生真面目に設定。それどころじゃない危機一髪な状況でもキャメラを回す人物に「撮ってないで車に乗れ!」なんてツッコむ台詞に笑えたりとなかなかに楽しく、かつ作り手の意欲を感じさせる仕上がりなのだ。肝心の災害イフェクトも大迫力、ひたすらエスカレート、ひたすらクレッシェンド(途中「竜巻の目」というブレイクあり)というリズムもツボを押さえていてよろしい。
竜巻ジャンルでは史上最高の映像美に圧倒される
『ツイスター』で牛が空を舞った瞬間、危険すぎる状況なのに「おお、すごい」と心のなかでガッツポーズした私。あの特撮はすごかった。でも映像技術の進化はさらなる竜巻映像を誕生させた! もう巻きの迫力から違うし、疾走感とパワー、轟音がケタ違い。登場キャラの安易な設定や先が読めるB級な展開もまったく気にならず、ただただド迫力の竜巻映像を食い入るように見るのみ。てか、本当の主役は次々と発生する竜巻! しかも今回は2本の竜巻が合体して巨大竜巻に成長するのだから、観客の想像力を軽く凌駕してるでしょ。実際に被害に遭われた方々には申し訳ないけれど、怖いもの見たさって確かにあるなと実感しました。
嵐に飛び込む! ウェルメイドな群像アクション
“嵐の中へ”というタイトルどおりのエンタテインメント。群像劇のスタイルをとる本作は面白いことに、登場人物の多くが、本来であれば逃げるべき対象である巨大竜巻に飛び込んでゆく。
父親は息子を救うため、竜巻調査隊は観測史上最大のトルネードを映像に収めるため、バカ者コンビはYouTubeに遭遇映像を上げるため。エピソードによってはウェットになりかねないが、ドキュメンタリー風の主観映像が活きて、それを中和。そんなバランスの良さが本作のミソと言えるだろう。
逃げ惑う人々の切迫感も伝わって来るものの、主軸は嵐の中へ飛びこんでゆく者の必死さ。これはパニック映画というよりアクション映画だ。
映画の「娯楽性」はネット動画の「リアル」に負けない!
まずは極めて現代的。ハンディカメラやケータイ動画など、個々の実況中継映像による構成は「皆がカメラマン」になった時代の映像環境を全面反映したもの。その方法論の採用は、竜巻という自然災害が、いま最も現実的な「怪獣」的恐怖として我々に迫っているとの認識ゆえだろう。
同時に素晴らしいのは、POV系にありがちな小賢しい「リアル」を免れていること。『クローバーフィールド/HAKAISHA』でさえ、自主映画っぽいフェイクドキュメンタリーの安さを帯びていたが、コレはハリウッド大作ならではの馬鹿力を存分に発揮。ホルスタインを巻き上げた『ツイスター』を更新する「もっとでっかいもんいったるわい」的な豪快さに拍手!
“とりあえず3D”にモノ申す!
怪獣、ロボット、龍王が猛威を奮った14年夏、最後にやってくる巨大竜巻は想像以上。『ツイスター』同様、命知らずの“ストーム・チェイサー”を中心に、ノースターながら親子の確執やラブストーリーなどのドラマがちゃんと描かれ、装甲車にまでカタルシスを感じさせるから驚き。一方、『シャークネード』の流れも考慮してか、「ジャッカス」ばりに一攫千金を狙うバカコンビやジャンボ機を飛ばしながら、完全にバカ映画に振り切らない絶妙なバランスに脱帽。そして、昨今の“とりあえず3D”の流れに逆らう2Dのみという潔さは、3D超えのアトラクション感を実現した作り手の自信とともに、往年のパニック映画のオマージュと受け取れる。
こっそり満喫!超巨大スケールの体感型アトラクション!
コワイもの見たさと、見たことがないから見てみたいという、原始的な欲望をきっちり満たしてくれる体感型アトラクション・ムービー。監督は「ファイナル・デッドコースター」シリーズ第5作のスティーヴン・クエイルなので、未曾有の巨大竜巻のライド感もスリルも、デッドコースターばり。登場人物たちが手持ちのムービーやケータイで今撮っている映像という設定の画面を多用して、リアル感と体感度を増幅させている。
とはいえ竜巻は災害。楽しんでは不謹慎なので、形は家族愛ドラマに。さらにYouTubeへの体験動画投稿が趣味の冒険バカコンビが登場、観客は彼らに眉をひそめるポーズをとりながら、こっそり竜巻ライドが楽しめる。