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ジョジョ・ラビット (2019):映画短評

ジョジョ・ラビット (2019)

2020年1月17日公開 109分

ジョジョ・ラビット
(C) 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation &TSG Entertainment Finance LLC

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

ミルクマン斉藤

サム・ロックウェルのひねくれナチもいい味。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

「マイティ・ソー」を完全にコメディ化しちまったワイティティ。マイノリティやオタクに対する彼の繊細なセンスは’07年のtiffで上映された『イーグルvsシャーク』が発端だろうが、その真価を見せつけるのが本作。あまりにもリアルじゃないので開巻数分は「ヒトラーユーゲントに憧れる現代少年の話」と思って観てましたよ。言語も英語だし、なんせ最初に流れるのはドイツ語版のビートルズだし。色彩も美術も衣装(S・ヨハンソンのそれは画期的)もポップだけど、実は真摯な、ナチ少年とユダヤ少女の「小さな恋のメロディ」的革命映画なのだ。ちなみに少年のイマジナリー・フレンドとして現れるヒトラーはユダヤ系マオリ人の監督自身。

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山縣みどり

ナチスの恐怖を子供視点で笑い飛ばす快作

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

ナチス予備軍ヒトラーユルゲントをコメディ仕立てに描いたT・ワイティティ監督の大胆さは賛否分かれるかもしれない。ナチスにもいい人がいる設定だしね。S・ロックウェルの怪演に笑って、泣いた。しかし人種差別の愚かさやマインドコントロールの残酷さ、さらには分断を許さない姿勢など本作が伝えたいメッセージは正しく、静かに心に滲み入る。ヒトラーを心の友とする気弱な少年ジョジョ役のR・G・デイビス君はこれがデビューらしいが、堂々たる演技を披露する。ユダヤ人少女との初恋めいた関係にも胸キュン。しかし、私が惹かれたのは彼の“2番目”の親友ヨーキー君。戦争のアホらしさを達観した少年の賢さを体現していて、お見事!

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相馬 学

米賞レース席巻も納得の反・分断ドラマ

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 戦時下の子どもが活き活きと描かれている点ではドイツ版『戦場の小さな天使たち』というべきか。加えて、反”分断”という現代的なテーマを盛り込んでいるのがミソ。

 ナチスかぶれの10歳の男の子が、年上のユダヤ人少女との交流を通して人種の壁を見直していく物語。テーマは明確だが説教臭は微塵もなく、子役の愛らしさとユーモアに彩られ、後半のシリアスな展開も温かくも切ないヒューマニズムで描き切る。

 多くの主要キャラクターはナチスの兵士でさえ人間的で、イイ味を出している。ボウイ“Heroes”のドイツ語バージョンなどの音楽の使い方を含め、すごく良い映画を見たと思える一本。

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村松 健太郎

夢から醒めた夢

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

ヒットラーを盲信するヒットラーユーゲントの少年ジョジョの理想と現実の物語。
今年の賞レースのラインナップの中では一番コメディ寄りかなと思います。ちょっと無理のある展開もありますが、自由な女性を演じるスカーレット・ヨハンソンと、独特の価値観で動く大尉を演じるサム・ロックウェルの好演が光ります。
サム・ロックウェルはアカデミー賞を獲って、余裕が出ましたね。スカヨハもMCUの合間でマリッジ・ストーリーや本作などリラックスした顔を見せてくれます。

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くれい響

戦場の『ムーンライズ・キングダム』

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

ヒトラーが“心の友だち”である、ヘタレ少年奮闘記(淡い初恋要素アリ)。冒頭からビートルズによるドイツ語カヴァー「抱きしめたい」が流れたかと思えば、タイカ・ワイティティ監督作でおなじみのラ・ヴィンセントによるポップなアートワークが全開し、“戦場の『ムーンライズ・キングダム』”といった感覚だ。コミカルとシリアスを絶妙なバランスで畳みかけることで、観る者の感情を揺さぶってくる演出は、狙い過ぎにも思えるが、やっぱり巧い。さらに、母役のスカヨハに、教官役のレベル・ウィルソンに加え、リブート版『ホーム・アローン』主演に抜擢された親友役のアーチー・イェーツのキャラが可笑しくも哀しすぎ!

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平沢 薫

少年の目に、世界はカラフルでコミカルに映る

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 これまでも子供を主人公にナチスの時代を描く映画は多々あったが、本作は映画1本をまるごと10歳の少年の視点から描くというコンセプトが新鮮。彼の目に世界がどのように見えたのかを描くので、世界は現実からかけ離れたカラフルな色彩で、人々はコミックのキャラクターのように動く。画面はすべて少年の目に映る空想世界なので、色もデザインも一つの感覚で作り込まれていて、その意味でウェス・アンダーソン監督作の映像にテイストが似ているのにも納得がいく。
 そして映画は、あの時代に自分の目に映った空想世界を見ていたのは、果たして子供たちだけだったのかと問いかける。さらに、では今はどうなのかと問いかけてくるのだ。

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斉藤 博昭

観客に愛されるこの作品、どこまでオスカーレースに食い込む?

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

ナチス支配下のドイツの町で、空想も含めた少年の日常は基本、ほんわかで笑えるのだが、そのムードが転調し、怒涛の衝撃→感動をもたらす作りは鮮やかとしか言いようがない。要所の演出に「あざとさ」があるものの、それを補って余りあるのが、主人公ジョジョを演じる子役の愛おしいまでの名演技。ホアキンがいなかったら、史上最年少の主演男優賞を差し上げてもいいレベルだ。彼の表情だけで泣ける瞬間が何度も訪れる。

戦争を皮肉ったコメディ+感動のバランスと少年の切実さと成長で、最も近い感触は『ライフ・イズ・ビューティフル』か。途中のノリに好き/嫌いはあっても、観終わった瞬間、嫌いな部分を忘れている。そんな傑作である。

この短評にはネタバレを含んでいます
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