ジャングル・クルーズ (2020):映画短評
ジャングル・クルーズ (2020)ライター6人の平均評価: 3.5
人気アトラクションの映画化は、子ども向きではないかも
子ども向けアトラクションをメリハリのある冒険物語に仕上げた脚本家チームがまず素晴らしい。楽しそうにスタントをこなすE・ブラントやコメディ演技が光るロック様はじめ配役も豪華だし、美術や衣装も特撮も凝っていて、さすがはディズニー映画。ファミリー向け映画をJ・コレット=セラ監督が手がける時点で想定外のケミストリーが生まれる予感はあったが、残酷なシーンもあるし、呪われた集団が『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのデイヴィ・ジョーンズよりグロく、怖すぎ。小さい子どもは泣くかも。個人的には、ドイツ皇帝の御曹司を演じるJ・プレモンスから目が離せず。邪悪さと馬鹿さが混合したキャラ作り、大成功!
ロック様がパークのキャストのように楽しく、たのもしくガイド
アトラクションを基にしつつ、「パイレーツ」と同じく、もちろん物語はオリジナル。アマゾン奥地の秘宝探しアドベンチャーで、しつこい敵あり、見るも恐ろしいキャラの登場、秘密&裏切りに笑い、要所のアクションとソツがない作りで、夏休み映画にぴったりな装備と様式だ。
楽しいのは、パークのジャングルクルーズの再現度。ドウェイン・ジョンソンの軽妙トーク&しつこいくらいのおふざけノリは、パークのトレーニングを受けたかのよう。野生動物、先住民族に加え、アトラクションそのもののシーンも出てくるし、舞台が1916年ということもあって牧歌的なムードが漂うので、初めてジャングルクルーズに乗った感覚を思い出させてくれる。
2人の掛け合いは、もはや『ロマンシング・ストーン』
ロック様による、おなじみの言い回しのガイドシーンから始まるなど、しっかりアトラクションに対するオマージュもありつつ、レトロな時代設定やら、“不老不死の花”の存在やら、ジェリー・ブラッカイマーが絡んでないのに2時間越えの全部乗せ感やら、『パイレーツ・オブ・カリビアン』に続く、二匹目のドジョウを狙っているのがバレバレ。ジャウム・コレット=セラ監督作らしいクセやキレの良さはないものの、ひたすら胡散臭いロック様と行動派なエミリー・ブラントの絶妙な掛け合いは、『ロマンシング・ストーン』を思い起こさせる。さらに、潜水艦を乗り回すジェシー・プレモンスのキレ芸は、みどころのひとつだ。
あえて伝統的な秘境アドベンチャーが楽しい
1916年が舞台のいい意味で古風な『インディ・ジョーンズ』系秘境アドヴェンチャー。そこに、現代的なスパイスをちょっぴり加え、学者で冒険家でロマンを追うキャラは女性で、その弟の設定にも現代的な要素がプラスされている。同じくディズニーが人気アトラクションを映画化した『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ的要素も継承され、実際の伝説上の存在がアレンジされて登場、悪役には実力派俳優がキャスティングされてポール・ジアマッティやジェシー・プレモンスが出演。そのうえで、映画のリズムをきっちり現代的にアップデートしたところが本作のポイント。定番の出来事が起きていくが、スピード感が快適で気持ちいい。
映画で最高のライドを経験したいなら、オススメ
大人向けの高品質エンタメ映画を手がけてきたジャウマ・コレット=セラがディズニー作品を撮ることに一抹の不安もあったが、これは杞憂。アップテンポで情報を重ねる演出の妙は本作でも活き、快作となった。
まず、1910年代に舞台を設定したことが上手い。100年以上前の話なら、非現実的な展開も寓話性として受け止められる。呪いや伝説、秘宝などの逸話は、すべてファンタジーに昇華する……というワケ。ドウェインとエミリーの息の合ったかけあいもチャーミングだ。とりわけ、セリフも多く肉体的にも奮闘する後者はアップテンポを担う大熱演。
2時間を超える“クルーズ”はアッという間で、もう一度ライドしたくなる。
まさにテーマパークの乗り物に乗っているような楽しさ
アクション、コメディ、スリルたっぷり、サプライズもある王道のサマームービー。展開が早く、とにかく盛りだくさんで、1秒たりとも飽きさせることをしない。まさにテーマパークの乗り物に乗っているような体験だ。ジャングル・クルーズのアトラクション自体も、最近、時代に合わせてアップデートされたところだが、同様に今作も、クラシックな冒険ファンタジー映画でありつつ、モダンさが加えられている。ジェンダーのステレオタイプを排除したのはそのひとつ。また、さりげないながらLGBTQへの言及も。一番の魅力は、主演のジョンソンとブラントの相性の良さ。このふたりの組み合わせはぜひまた見たい。