ジョン・ウィック:コンセクエンス (2023):映画短評
ジョン・ウィック:コンセクエンス (2023)ライター5人の平均評価: 4.6
チアルート以上に「座頭市」なドニー・イェン無双!
シリーズ最長となる上映時間に、さまざまなシチュエーションのアクションを魅せることを優先した構成など、かなり『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』に近い。そこでジョンの旧友設定の2人の新キャラ投入となるが、前作『パラベラム』で寿司職人を演じる予定だった真田広之の活躍に至っては、想定の範囲内。だが、『ローグ・ワン』のチアルート以上に「座頭市」なドニー・イェンに関しては、完全に好敵手の立ち位置で、美味しすぎ。キアヌがだんだんヤス(平田満)に見えてくる階段バトルを経て、もはや「一休さん」な“とんち”の効いたオチまで、愛さずにはいられない一本となった。
アクションの見本市
このシリーズはキアヌ・リーヴスという大スターのネームバリューを利用して、最先端のアクションを見せて回る”アクション見本市”というのが正しい立ち位置だと思いますが、そういう意味では今作はまさに集大成的な一本。169分という長尺にギッシリ、みっちりとこれでもかとアクションが詰め込まれています。真田広之、ドニー・イェン、スコット・アドキンスといった”動ける人たち”にもたっぷりと見せ場が用意されているのもありがたいです。前半の大阪の描写も微笑ましく見れました。
これが完結編であっても大満足!
最終章になるかどうかはわからないが、これで終わっても満足。ファンとして、そう言い切れるクオリティだ。
劇画調のアクション描写は従来どおりで、キアヌは今回も大熱演。そこに真田広之、ドニー・イェンというアジアの2大爆弾を落とし込む。前者の個性である武士道的ストイシズムがドラマを引き締め、後者は、それを継承しつつ、目の不自由な凄腕の暗殺者はこう動く……ということを体現する。それだけでお腹いっぱい。
クライマックス近くのパリ、サンクレール寺院前の222階段でのアクション。『蒲田行進曲』の階段落ちシーンに匹敵するアツさで、男泣きした!
銃撃の反響音が世界を覆う
残響音が耳に残る。銃撃の音、刃と刃の摩擦音、とにかく音の数が凄まじいのだが、その音色が、70年代末のポップソングのエフェクト過多の音にも似た響きで、後を引く。この感触の持つ、昨今のアクション映画のHIP HOP系のノリとは全く異なる一種の古風さが、全編を貫く。それが昔ながらの男と男の物語によく似合う。この音響が世界を覆っているので、パリでもベルリンでも、夜が来て男たちが銃を握れば、そこはいつものジョン・ウィックの世界になる。
キアヌ・リーヴスは真にハマリ役。ドニー・イェン、真田広之が、得意技を活かす役で本領発揮。敵役ビル・スカルスガルドの背後にヨーロッパの豪奢と退廃の匂いが漂う。
見せ場の連続と主人公の麗しき佇まいで長尺もまったく飽きず
シリーズ最長の2時間49分に一瞬ひるむも、ここまで飽きさせないのは奇跡的?
舞台の一つが大阪。リアリティと、ハリウッド映画にありがちな“変な日本”の美術、そのバランスが今回はちょうどいい。ジョンのケレン味たっぷりの戦い方が、人工的な大阪の風景に異様にマッチする。
その他の場所でも、シリーズらしい「斬新なアクション演出」が意識され、カメラの大胆なアングルも随所に。犬の使い方も今回は特殊で楽しい。
4作目になって、ますますストイックさ、孤高さ、さらに神々しさにも磨きをかけたジョン。時折口にする教訓的セリフが胸に突き刺ささる。真田広之、ドニー・イェンの見せ場への配慮にも深いリスペクトが感じられた。