ワンダーウーマン 1984 (2020):映画短評
ワンダーウーマン 1984 (2020)ライター8人の平均評価: 3.9
ディズニープリンセス劇にも似たアメコミ映画の発展形
ヒロインの冒頭のナレーションは、そのまま映画の教訓的なテーマに。これから始まる物語が、おとぎ話的なものであることを予感させる点に、まず引き寄せられる。
シリアスな流れでヒロインの成長を描くのは、前作と同様のタッチ。回想で描かれる超人的な運動会、モールでの悪党退治など、アクションの見せ場にも事欠かず、大作の風格は確実に味わえる。
興味深いのは近年のディズニーのプリンセス・ストーリーにも似た構図。恋に生きるのではなく自分を磨いて生きるヒロイン像は、悪人らしい悪人が出てこないキャラ配置や、教訓含みのドラマにハマった。アメコミ映画らしいエッジには乏しいが、これはこれでアリだろう。
「1984年のテーマパーク」からのメッセージ
率直に言って想像以上に良かった。このパワフルな151分を劇場で体験できる幸福。まずショッピングモールのシーンで示される「84年」の再現ぶりの楽しさ。その上で代償(何かを得れば、何かを失う)をめぐる切なさと、「世界は美しい」というあるがままの倫理へと回復を図る物語が、爽快なアクションと共に展開されていく。
強欲の暴走(そこには「持たざる者」の自意識が生む共感の回路がある)により冷戦末期の世界が大混乱に陥るが、いかに事態が荒れ狂っても、底辺には大らかな楽天性と人類の未来への信頼がある――これぞ本作が継承する80sハリウッド映画の美点だったと思う。ボーナストラック的なラストショットもお見逃しなく!
ヒーローものの基本に立ち返った快作
80年代が舞台なのは、冷戦の余波があり、拝金主義に侵される前だからか? 冒頭のシークエンスでダイアナが叔母から受けた教えが重要で、フェイク氾濫にイラつく身に響いた。超常現象も絡むスーパーヒーローものなのに身近に感じるのは、ガールクラッシュをこじらせる友人バーバラや一攫千金以上のものを狙う詐欺師マックスがどこにでもいそうな人間だからだろう。人間の弱さに忍び寄る悪を正すヒーローものの基本に立ち返っている。政治的メッセージは薄いが、夢と希望を与える展開だ。ガル・ガドットは今まで以上にハードなアクション演技を披露し、スピード感も迫力も増している。長尺だが、ガルを見るだけでも楽しいので星1つ追加。
見事なまでのワンダーウーマン映画
前作での圧倒的な成功という担保を手にしたパディ・ジェンキンス監督とガル・ガドットはこれまでにないほど伸び伸びとした映画を創り上げてきました。
2時間30分の長尺ではあるもの、それを全く感じさせない映画に仕上がっています。ニヤリとさせる原作からのエッセンスのバランスも含めて、一級の娯楽大作に仕上がっています。そして、ワンダーウーマンの最大の特性である慈愛を感じさせる選択とエンディングに熱くなるものがあります。2020年の年末に最適な映画が間に合いました。
冒頭からスクリーンでアクションを浴びる快感に浸ってしまう
冒頭のアマゾン族、大運動会から「こういうアクション映画を大スクリーンで浴びたかった」と快感に酔いしれた。その勢いは、80年代を意識した派手な悪者退治へと継続。ワシントンDCのロケも効果的に機能する。主人公の胸のすくような活躍と、ロマンチックな要素のコントラストも前作以上で、『ゴースト/ニューヨークの幻』や『天国から来たチャンピオン』が重なり、ノスタルジックに胸を締めつけられる瞬間もあった。
ただし、2時間半の長さに相当する物語かは疑問だし、悪役の造形、何でもアリ的な世界危機、教訓の盛り込み方など、80年代の世界を意識したとはいえ、明らかに近年のスーパーヒーロー映画の流れから「後退」を感じる。
ガルとクリスの相性がまたもやばっちりで楽しい
前作では慣れない世界で奮闘するダイアナをスティーブが優しく見守ったが、今作では立場が逆転。スティーブをまた引っ張ってくるやり方にはやや無理があるかもしれないものの、相性ばっちりのこのふたりをまた見たかったから、文句は言わない。オリジンストーリーで比較的まっすぐだった前作に比べると、物語はちょっと欲張って盛り込みすぎたかなという感じ。せっかくクリステン・ウィグが演じるバーバラをもっと見たかった気がする。それでも、ポジティブでハッピーなこの映画の魅力は健在。舞台が80年代というのもビジュアルをカラフルかつ楽しくしている。おまけシーン的なスティーブの80年代ファッション着せ替えごっこもご愛敬。
大画面を推奨! 王道のスーパーヒーロー映画
サム・ライミ監督の「スパイダーマン2」で、主人公の超宙返りを見た子供2人が、どうしたら出来るのかと聞き、主人公が「よく寝てよく鍛え、野菜を食べるんだ」と答えると「ママもそう言うけどウソだと思ってた!」と感嘆する。この場面が象徴するように、スーパーヒーロー映画とは、誰もが知っている正論を真正面から描くもの。それをやるのが似合うフォーマットなのだ。その意味で、まさに王道のスーパーヒーロー映画。果てしない貪欲さの行き着く先を描く物語も、米大統領選挙年の公開が相応しい。ワンダーウーマンのアクション演出も新機軸。華麗な鞭さばきで大きな空間を縦横無尽に動くその勇姿は、大きなスクリーンで堪能したい。
前作以上に見せ場満載のクリプレ!
幼少時代の「KUNOICHI」エピソードから、明らかに『コマンドー』オマージュなモールでの活躍劇と、序盤から恐ろしいほど高まる! ヘスティアの縄の扱いがほとんど『スパイダーマン』のウェブ化するなか、ジゼル復活か?と思わせる『ワイスピ』なカーチェイスを経て、タイトル表記「WW1984」の意味合いとなる“世界大戦”の危機へと突入。スティーブとの再会劇はやや期待しすぎた感はあるが、ゲスト・ヴィランを演じるのがクリステン・ウィグというのはデカい。お得意の地味キャラから狂暴なチーターへの変貌は、キャットウーマンに通じるものもあり、前作以上に見せ場満載のクリスマス大作に仕上がっている。