略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。
近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。
スランプ中の作家が試した降霊術がとんでもない事件を巻き起こす設定は古くさい感じだが、現代風なアレンジで女性のエンパワーメント映画に寄せた。といってもガチなフェミニズムとは無縁。男性優位の社会で閉塞感を感じる女性がシスターフッド的に共闘し、幽霊(?)がダメ男を翻弄とニヤリとさせる感じ。進行上必要とはいえ結構ブラックな展開もあるのが気になったが、N・カワード全盛期には許容範囲だったのだろう。D・スティーヴンスが勝気な美女に振り回される情けない男を好演。女優たちを相手の受けの演技が魅力的だ。また出番は少ないけれど、ジュディ・デンチ様! スタント演技にも挑戦しているし、愛らしい。
理由がわからないまま父親を惨殺され、邪悪な暗殺者に狙われる少年コナーと、過去の失敗のトラウマを抱えた女性森林消防士ハンナのサバイバル。スリリングなチェイスを闇夜に燃え上がる炎が照らす絵面がかっこいい。A・ジョリーが久々にアクション演技に挑戦しているし、コナーの叔母が持つ特殊技能がドラマに色を添える。少年を狙う巨悪の正体が気になりはするが、事件を深追いせずにあくまでもサバイバルだけに焦点を絞ったT・シェリダン監督は潔い。全体的に丁寧な作りで好感が持てる。ただGOTのリトルフィンガーことA・ギレンとJ・バーンサルにはもう少し見せ場を作ってあげてもよかったのでは?
やる気も気力もない中年教師が同僚とともに始める「血中アルコール濃度0.05%で気分アゲアゲ」実験の結果は? どんどん深みにハマるアルコールの恐ろしさを伝えつつ、中年の危機を迎えた男たちの葛藤になんとなく納得させられる。無様とも言える現状打破や無気力への抵抗がコミカルで、冒頭で描かれる高校生の若気の至りと変化がないあたりに主人公たちの成長の遅さを感じる。酒の力を借りずとも幸せになれると下戸ならば思うはず。役者は皆、酔っ払い演技が上手で、本当に飲酒しているかのよう。ほろ苦さのある締め方は、予想を超えないが、マッツ様が披露する華麗なダンスは嬉しい驚き。さすが、元ダンサー!
北朝鮮の聖地である白頭山が起こす連続噴火を阻止せんと、韓国の特殊部隊兵士と北の工作員がタッグを組むという荒唐無稽なディザスター・パニック。事件が起きる現場とミッションを見守る青瓦台スタッフ&学者、兵士の愛妻それぞれの噴火への向き合い方を緩急つけて描写。手に汗握るアクションあり、コミカルな会話あり、泣かせる人間ドラマありと実に韓流な展開。特撮もレベルが高い。ハ・ジョンウとイ・ビョンホンの競演が大きな魅力だが、一筋縄ではいかない工作員を肩の力を抜いた感じで演じたビョンホンの貫禄勝ちかな。ドンソク兄貴は脇に回って、気弱なインテリ学者役でいい味出しています。
ホロコーストはナチス・ドイツだけの責任ではなかったことがよくわかる実話ドラマ。主人公のユダヤ人一家は迫害を受けてリトアニアから亡命してきたのに、ナチスのノルウェー侵攻で再び立場が脅かされることに!? 危険を察知し、隣国に逃亡する人もいたが、穏やかな生活を与えてくれた王国を信じた人がたどる運命は悲惨の一言だ。ユダヤ人狩りに資産没収、権利剥奪、そしてアウシュヴィッツ送還……。戦争関連の映画を見るたびに人間はとことん残酷になれる生き物だと実感し、恐ろしくなる。タブー視されていたナチス加担をノルウェー政府が認めたのが戦後70年近く経ってからというが、反省することが前進へとつながると信じたい。