山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • イン・ザ・ハイツ
    支え合って夢と希望を追う移民を応援したくなる
    ★★★★

    ワシントンハイツを舞台にラテン系移民の愛と夢がノリのいい音楽に乗って描かれる。90年代、クロイスターズに向かう地下鉄内で緊張を強いられたほど治安の悪い場所だったけれど、現在の住民たちは明るく楽しげ。もちろん人種差別や不当な扱いを受けるといった事情や移民の世代間差も描かれるが、ご近所同士が助け合う姿は微笑ましく、感動的だ。ハイツ名所でのロケやジョン・M・チュウ監督の鮮やかな色彩感覚、圧巻のダンスシーンと全てがエネルギッシュ。ブロードウェイでも人気のA・ラモスは当然として、C・ホーキンスの歌唱力にはちょっと驚いた。ドリーマーを支援するDACA政策を強化するバイデン政権にマッチした快作だ。

  • 夕霧花園
    戦争に翻弄された男女の恋に隠された秘密とは?
    ★★★★★

    第二次世界大戦で日本がマレーシアに残した傷跡を軸にした濃厚な恋愛物語。主人公はマレーシア華僑の令嬢ユンリンと謎めいた日本人・中村で、3つの時代を行き来しながら二人の関係と中村の秘密が明らかになる。キャラクターの心理を丹念な演出で見せるトム・リン監督なので、日本人を恨んで当然のユンリンと中村が惹かれ合う展開に無理がなく、複雑な思いを抱えた二人の恋の熱量が伝わる。一方、風光明媚なキャメロン高原のハイソな世界が耽美で美しい分、日本軍の蛮行シーンの醜悪さが際立ち、胸が痛くなる。そして驚いたのが、山下財宝や刺青といった伏線の巧みな使い方。外国人が考えるエキゾチック・ジャパンを超えていた。

  • 復讐者たち
    パルチザン版“イングロリアス・バスターズ”
    ★★★★★

    ホロコーストを生き延びたユダヤ人が立てた復讐計画を軸にした戦後ドラマで、知られざる史実がドラマティックに描かれる。同胞の命を奪ったドイツ人殺害を目指すユダヤ人組織ナカムは一見、『イングロリアス・バスターズ』。しかし怒りに燃えているのに、リーダーのアッバからして鬼気迫るというよりも悲壮感たっぷり。復讐は復讐しか生まないし、虚しさが残ると達観している風情だ。イスラエル建国を目指すハガナーとしてナカムに潜入する主人公マックスが逆に計画に夢中になる姿と対照的で、愛する家族を理由なく殺害された人間は憎悪をいかに発散すべきか考えてしまう。世界的にきな臭さが漂う現在、戦争の悲惨さを知るためにも見てほしい。

  • ココ・シャネル 時代と闘った女
    憧れのデザイナーの知られざる素顔に驚く
    ★★★★★

    女性をコルセットから解放したデザイナー、ココ・シャネルの来し方と人となりがわかるドキュメンタリーだ。ナチスとの関係や香水利権を巡る駆け引きといった黒歴史にも触れていて、ファッション誌の礼賛記事しか読んだことがない人にはかなり新鮮なはず。才能と政治は別問題かもしれないが、第二次大戦中の彼女の行動には嫌悪感を抱きそう。この作品にはしかもココ本人も登場し、かなり辛辣な発言をする。幼い頃から戦い続けとはいえ、人々の尊敬や社会的地位も勝ち得たはずなのに、彼女のビターさに驚くばかり F・サガンやJ・コクトーらのシャネル評も興味深く、憧れのデザイナーのあまり知られていない素顔に出会える快作だ。

  • 少年の君
    見守ってくれる人がいれば生きていける
    ★★★★

    貧しい優等生少女ニェンと母親に捨てられた不良少年シャオペイが偶然出会い、互いにとって唯一無二の存在となる。過酷な受験戦争を背景にしたいじめ問題を軸にした純愛ドラマだ。社会の底辺にいるティーンが痛みを分かち合い、絆を深めていく過程でD・ツァン監督らしい情緒的な演出が光る! 主演のチョウ・ドンユイ&ジャクソン・イーの演技が圧倒的に素晴らしい。見つめ合って、泣き笑いする場面など号泣必至。世界的な問題となっているいじめだが、中国のそれは一味違いそう。ネズミを使ったいじめって、怖すぎるし。また格差問題やストリートチルドレンなどからは、モラルの欠如を招いた超大国の異常性が透けて見える。

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